2011年5月20日金曜日

「柳之御所除外」どう対応 浄土との関連性認められず

(岩手日報 5月8日)

「平泉の文化遺産」に対し、国際記念物遺跡会議(イコモス)は、
「登録」勧告の条件として、柳之御所遺跡の除外を示した。

コンセプトと構成資産との直接的な関連性が必要とする
イコモスの姿勢の表れであり、再挑戦に際し除外された資産の
追加登録に向け、厳しい現実が突き付けられた。

奥州藤原氏の居館で、政治行政上の拠点「平泉館」と
推定されている柳之御所遺跡。
イコモスは、今回「浄土思想との直接的な関連性の点から、
本資産の顕著な普遍的価値の一部を成すものとは認められない

「平泉」は、登録延期となった前回の反省を踏まえ、
今回は「浄土世界」をコンセプトに掲げ、浄土思想に直接的な関連がある
六つに資産を絞り込んで再挑戦。
前回、イコモスから「浄土世界との直接的な関連が薄い」などとの
指摘を受けた奥州市の白鳥舘遺跡、長者ケ原廃寺跡、
平泉町の達谷窟、一関市の骨寺村荘園遺跡を除外、
これらの4資産は追加登録に回った。

今回の6資産のうち、柳之御所遺跡は、中尊寺や毛越寺のように
直接的な浄土世界ではないが、浄土世界を成立させた藤原氏の拠点。
その意味で、同遺跡は4資産の追加登録に向けた試金石。
推薦書では、同遺跡が無量光院などと緊密な位置関係にあるとの
観点も示したが、その論理はイコモスには通じなかった。

世界遺産委員会の行方次第では、柳之御所遺跡が「復活」する
可能性はあるが、勧告通り除外されれば、
追加登録を目指す資産は、「浄土世界」との同時代性や
間接的な関わりといった論理を超えて、
直接的な関わりを証明する論理構成が求められる。

世界遺産に向け大きく前進した「平泉」だが、
前段には多年にわたる発掘調査成果に基づいた平泉研究の蓄積がある。
その契機が、1988年に始まった柳之御所遺跡の大規模発掘調査。

県教委による調査は、今なお続く。
出土した多種多様な遺構・遺物は、浄土世界を成立させた
藤原氏の性格解明のみならず、日本史研究にも大きく寄与。
同遺跡が構成資産から除外されたとしても、着実な調査進展が必要。
その成果が、浄土世界の輝きを一層増すことになる。

◆大矢邦宣・盛岡大教授の話

いい結果が出て、大変うれしい。
被災地の励ましにもなるだろう。
「平泉」が認められたことはもちろんだが、日本人本来の美意識が
認められたともいえよう。

世界遺産といえば、壮大なものというイメージがあるが、
金色堂のように小さなものに対する美意識、自然を生かし大切にする
美意識が日本文化だ。
柳之御所遺跡の除外については、素直に受け止め、
将来的な追加登録に向けて前向きに捉えたい。

◆入間田宣夫・東北芸術工科大教授の話

「平泉」が世界に認められた。歓迎すべき勧告だ。
工藤雅樹先生(推薦書作成委員会委員長、故人)が生きていたら、
どんなに喜んだろう。

柳之御所遺跡は、中尊寺や毛越寺を造営した藤原氏の根拠地であり、
浄土世界の全体をつなぐ上で不可欠な要素と考えていただけに、
除外は非常に残念。
6月の世界遺産委員会に向け、早急に推薦書作成委員会を開き、
今後の対応を議論する必要がある。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110508_7

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