2009年8月15日土曜日

東大本ブームの裏側にあるものは?

(日経 2009-08-08)

東京大学に関連した、“東大本”がブーム。

この1年で、「東大合格生のノートはかならず美しい」(文芸春秋)、
「東大英単」(東京大学出版会)などヒット作が目白押し。
受験生のみならず、一般の会社員や主婦に読まれている。
なぜ今、東大本ブームなのか?

「『知の技法』以来ほぼ10年ぶりのヒット」
東京大学出版会は、今年3月に発行した「東大英単」の売れ行きに
驚きの表情を隠さない。
発行部数は6月末で7万部、初年度で10万部を突破する勢い。

元々東大出版会は、研究者や東大生向けのお堅い本が主体。
東大英単も、学生向けの教材として当初書かれたものだが、
会社員が次々購入、同出版会は「東大の冠は読者受けを狙い、
あえて入れたのだが、これほど売れるとは予想外」

「東大合格生のノートはかならず美しい」も、
累計で37万部に達するベストセラーに。
続編や類似の出版物も次々売り出され、一大ノートブーム。

「東大教師が新入生にすすめる本」(文芸春秋)も売れ、
早くも続編が書店に並ぶ。
紀伊国屋書店では、同書に関連したブックフェアを開始。

深刻な出版不況の中で、東大の冠がなぜこれほど
一般の読者を引き付けるのか?
初老の東大教授は、「以前は東大に偏見やコンプレックスを
持つ人もいたが、今は好意的に見てくれる人が増えた」

東大受験をテーマにしたコミック「ドラゴン桜」(講談社)
メガヒットとなり、東大出身のタレントがクイズ番組に
続々登場するなど、お茶の間でも身近な存在。

これは、「大学自身がPRを始めるなど、
オープンな姿勢に変わってきたことが背景に」(東京大学新聞)。
東大は、2005年から全国で受験生相手の学校説明会を開始、
一方で各学部に広報を設置、競って研究成果や情報公開に。

オープン化の裏には、「学生の質の劣化がある」
少子化やゆとり教育の導入で、高校生全体の学力が低下。
医学部ブームで理1、理2に理数系トップの秀才が集まらなくなった。
ハーバード大など、欧米の有力大を直接目指す高校生も。

学校説明会に踏み切ったのも、京都大学などに流れていた
地方の秀才を1人でも多く獲得するため。
メディアで、東大のブランドがはんらんするのも
大学側には都合のいい現象。
象牙の塔から脱皮を図ろうとする東大。
一連のブームの裏側では、大学関係者の焦りも見え隠れする。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/syohi/syo090806.html

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