(日経 2009-07-31)
新しい産業や強い事業を生み出す際、
最新の科学成果を原動力にする事例は多い。
産学官が連携して、「つくばナノテクノロジー拠点」の
整備に向け動き出した。
ナノテクやバイオテクノロジー、ロボットなど期待が寄せられる
分野は、「サイエンス型産業」とも呼ばれ、
2009年版の科学技術白書はその重要性を唱えている。
果たして日本は、サイエンス型産業で、
世界の大競争を勝ち抜いていけるのだろうか?
緊急経済対策と銘打った補正予算で、
企業の研究開発を支援するプログラムが目白押し。
「つくばナノテクノロジー拠点」の整備はその1つで、
経済産業省と文部科学省で合わせて361億円を計上、
産業技術総合研究所と物質・材料研究機構、筑波大学、
日本経済団体連合会の4機関で構成する「運営最高会議」が、
研究テーマの策定や運営体制などを詰めている。
現時点での構想では、パワーエレクトロニクスや
ナノエレクトロニクスなど、6つのコア領域を決め、
試作ラインや計測サービスの開放、国内外に開かれた共用研究室
などの基盤を整備。
10年度から本格活動に入る予定で、
参加する企業や大学をこれから募る。
産業界の期待は大きい。
「これが、エレクトロニクス再興のラストチャンスかもしれない」
国内メーカーは、事業統合によって減り続け、世界的な不況で
メモリーメーカーが公的支援の受け入れを決めるなど、破綻寸前の状態。
未開拓領域への集中投資で、巻き返しを狙う。
新しいプログラムによって、
世界で競争力のある産業を作り出せるのだろうか?
エレクトロニクス業界の研究開発を支援する経産省のプログラムには、
低消費電力の回路確立を目指す、「半導体MIRAIプロジェクト」
などが進行中。
つくばナノテク拠点のテーマは、それらの継続のように見受けられる。
産業界に、自ら研究開発を負担する体力がなくなり、
国が補完する構図が鮮明。
未来のエレクトロニクスのため、国として保持しなければいけない技術や
ノウハウ、人材を一気に失わないようにする、防衛的な研究開発。
「サイエンス型産業」は、長期にわたって技術の覇権を握り続ける
米国の動向を分析して誕生した考え方。
科学論文に裏打ちされた特許出願や、大学の研究をもとに設立した
ベンチャー企業による産業創出という現実を踏まえ、
半導体をはじめとする先端分野で、日本もこの路線を突き進むべきだ、
という指摘が出始めた。
科学技術の政策から、強化すべきテーマを練り直さなければいけない。
木村英紀・東京大学名誉教授は、
「日本の弱点は、理論・システム・ソフトウエア」と指摘、
もっと横断的な科学技術の振興に力を入れようと唱えている。
電気・電子や機械工学、材料力学、応用化学といった
従来型の科目に縛られるのではなく、
制御工学や設計学、ネットワーク、複雑系など新しい研究の枠組みを例示。
直面する技術的課題の解決に生かせるテーマ。
日本は長く、製造現場の強いものづくりで、
経済成長を遂げていく思いにとらわれていた。
これからも、強いものづくりを実現していくためには、
根幹となる科学技術を、いかに強くしていくかを考えなければいけない。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090729.html
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