2009年8月10日月曜日

学びの情報基地(3)展示品通じて市民交流

(読売 8月1日)

ユニークさで人気の美術館も、
新たな存在意義を求めた催しを続ける。

「親指に毛糸をひっかけて、指の間を通して……」
金沢21世紀美術館で、スタッフが編み物を教えていた。
戸惑う人も、「大丈夫」と励まされ、毛糸の花を約20分で完成。
それが、この場の展示作品になる。

スタッフは、「メンバー」と呼ばれる10~30歳代の男女20人。
看護師大橋貴子さん(36)は、「いろんな人に会え、
仕事と違った刺激があります」

この催しは、地域の若者の交流活発化のため、
2007年度に始まった教育プログラムの一環。
04年の開館以来、水を張ったプールの底を人が歩くように見える
作品などで話題を呼び、年間約157万人が訪れる
大人気の同館による地域貢献の次の一手。

1、2年目は、アーティストの日比野克彦さんらと組んだアートや
演劇のプロジェクトを開催。
今回は、「『編む』とは、ゼロから何かを生み出すこと」という
「ニットの貴公子」広瀬光治さんの考えに共感して実現。
公募で集まったメンバーは、合宿でみっちりと編み物指導を受け、
仲間や入場者との交流を通して創造の意味を考えている。

「教科書で見た絵や」、
「ゴッホの『ひまわり』ゆうたら、本物は何十億やろ」
広いロビーに感嘆の声が響く。
大塚国際美術館(鳴門市)には、ピカソ「ゲルニカ」、
ダ・ビンチ「モナ・リザ」、エル・グレコ「受胎告知」など、
世界25か国の名画約1000点がずらりと展示。
これらは、すべて陶板に焼き付けた複製。

同館は1998年、「古代から現代までの名画が実物大で、
触って鑑賞できる」を売りに、陶板名画美術館としてオープン。
昨年度の年間入館者数は約23万人、大人3150円という
入館料の高さも影響し、渦潮観光とセットで訪れる観光客が大半。
教育普及担当の喜井智子さん(36)は、「リピーターを育てたい」

その一つが、鳴門教育大学、鳴門市と共催で、
5年前から行う小学生向け美術鑑賞ワークショップ。
今年2回目のイベントに、市内の小学3~6年生47人が参加。
同大生の指導で、館内の絵画に描かれた人の形をまねたり、
クイズで遊んだりした。

県立城ノ内中学校(徳島市)の3年生18人が訪れ、
ラファエロ作の「アテネの学堂」に描かれたピタゴラスが見つめる図を
教材に、数学の講義を受けた。
同中の斎藤大輔教諭(45)は、
「複製だが、迫力のある作品の前で数学を学び、
子どもたちの見方が広がったようだ」

話題性の裏で、教育普及に向けた地道な努力が続けられている。

金沢21世紀美術館の企画展
「広瀬光治と西山美なコの“ニットカフェ・イン・マイルーム”」は、
公開制作が9月11日まで、展示は来年3月22日まで。
(電)076・220・2800。

大塚国際美術館は、鳴門公園内にあり、
ロボット「アートくん」が名画解説を行う。
(電)088・687・3737。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090801-OYT8T00317.htm

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