2009年8月10日月曜日

シリコンバレーに学ぶ「雇用」

(日経 2009-08-06)

去年の暮れ、雇用問題が大いにメディアをにぎわした。
電機メーカーや自動車メーカーの「雇い止め」が“糾弾”、
日比谷公園の「年越し派遣村」の映像が、連日お茶の間に。
半年余り、雇用関連の話題はすっかり下火になったが、
問題自体が消えたわけではない。
実情はかなり深刻なようだ。
「平成21年度 経済財政白書」にはこんな数字が。

「雇用保蔵」という概念をご存じだろうか?
企業の雇用人数から、生産量を達成するための
「適正労働者数」を差し引いたもので、
企業がどのくらい過剰雇用を抱えているかを示す数字。
昨年10~12月、日本企業の雇用保蔵は600万人前後に達し、
これは驚くべき事態。

山一証券などが倒産した1997年の金融危機、
上場企業の合算損益が赤字転落した2002年ITバブル崩壊時さえ、
上回る過剰雇用に今の日本企業は耐えている。

「日本企業の過剰雇用は解消した」といわれたが、
世界的な需要減退を受け、日本企業は大量の
「社内失業者」を抱え込んだ。
今後景気が回復し、生産が復調すれば、
「適正労働者数」も増加し、雇用保蔵は低下する。
が、現実はそれほど楽観を許しそうにない。

この問題をどう解決すればいいのか?
1つの方向性は、労働者のモビリティを高め、
成熟産業から成長産業へ人の移動するスムーズに進めること。
人間であるからには、旧来の仕事への愛着もあれば、
会社への愛着もある。
過剰雇用の深刻さを考えれば、流動性を高める方向を
目指さざるをえない。

日本の雇用について、いろいろ神話があり、
「転職社会が到来した」といわれるが、実態は変わってない。
日本の大企業システムが絶頂期にあった、
1990年の男性正社員の転職率は3%、2005年は3.5%。
女性やパート・アルバイトを含め、転職率の数字は上昇しておらず、
諸外国に比べても低い水準。

日本社会とは真逆の転職社会といえば、米シリコンバレー。
バレーの地域研究に取り組むアナリー・サクセニアン氏に、
「頻繁に転職をする人は、『継続して何かをやり遂げる達成感』や
『職場への帰属感』が持てなくなって、経済的に成功したとしても、
人生が無味乾燥なものにならないか」と聞いたが、
「彼らは、特定の企業に帰属しないかわりに、
専門が同じ人たちのコミュニティーに帰属し、
そこでの評価や人間関係を大切にしている。
大学時代の友人関係も強固で、強いネットワークを維持

自分の周囲を見渡しても、会社を辞めて転職、独立する人の
性格やその後の職業は様々だが、共通するのは、
ほぼ例外なく社外に大勢友達がいる人。
社外のネットワークがあるからこそ、転職リスクの高い日本で
転職に踏み切ることができる。

シリコンバレーの事例が、日本全体の雇用問題の解消に
役立つかは分からない。
専門技能を持ったバレーの人たちと、派遣で雇い止めされた人を
同列に考えるのは難しいが、
自分の帰属する組織の外にネットワークを持つこと。
友達をたくさんつくれば、それだけ情報も増え、
満足いく転職ができるチャンスも広がるのでは?
転職なんかしなくても、今の組織で一生やっていけると
自信のある人には関係ない話だが、
「雇用保蔵600万人」という衝撃の数字を目に、
いろいろ考えてみた。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt090805.html

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