2010年3月7日日曜日

エム・オー・マリンコンサルの鏡社長 「安全は愚直な努力の積み重ねから」

(日経 2月25日)

海運会社にとって、日々の安全運航を継続するのは
最大の経営課題。
運航システムや港湾環境がめまぐるしく変化を続けるなか、
船長や航海士の運航技術を磨き、
どうやって重大事故を未然に防ぐのか。
商船三井の人材開発子会社、
エム・オー・マリンコンサルティングの鏡敏弘社長に聞いた。

——会社の事業目的は?

「『安全』が、海運会社の基盤であることは言うまでもなく、
安全運航を続けていくためには不断の努力が必要。
当社は1988年、海上従業員の訓練を集中的に実施するため、
別会社として設立。
96年、操船シミュレーターを導入、実際の業務で必要な
港内の操船技術をチェックし、習得できる」

それでも、事故は起きてしまった。
コンテナ船の機関室火災、自動車運搬船の横転、
大型タンカーからの原油流出、鉄鉱石運搬船の座礁。
熱心に、海上従業員の訓練を実施していたつもりだったが、
残念なことに96年、4件の重大海難事故が発生。
事故を再現したプログラムなども取り入れ、
教育プログラムを充実させ、再発防止に努めている」

——具体的には?

船員の教育に加え、商船三井本体の海上安全部と
連携・補完する形で支援。
新しく船長になる人や船の種類が変わる人などに
訓練を義務付け。
シミュレーターには、日本の主要な港や海外の主要な港の
データがそろっている。
電子海図や自動船舶識別システムが、日進月歩で進化、
それに合わせて最新のデータを取り入れる」

バーチャル空間で、2隻同時に操船研修ができるのが特徴。
夜間など、実際の港湾に限りなく近い状態を再現でき、
課題や安全確保の方法が検討できる。
フィリピンやインドなどの船員学校でも、
小型のシミュレーターを導入」

——海賊問題への対処は?

「シミュレーターでは、海賊船を登場させていない。
日本の商船は、武装していないこともあって、
決定的な解決策はない。
遭遇しないよう、不審な船には近づかないことが鉄則。
万が一、護衛船がいない時に海賊船に遭遇した場合、
速やかに関係各所に連絡し、早く逃げるしかない」

——船や航行の自動化、機械化が進んでいる。

「性能が向上したシステムが次々に導入、安全面では格段に向上し、
重大事故は減っている。
航海士にとって、必要な本船の位置情報も、
即座に分かるようになった。
それでも、安全運航のためには、人間の五感に頼るなど
『肌で感じる』必要。
機械に頼りすぎるのはよくない。
万が一、機械が故障した時に機敏に対応するためには、
どうすれば良いかを日ごろから訓練することが必要」

——研修を受ける人に訴えていることは?

安全を追求するには、どんなに小さなことでも
愚直にやることが大切。
これで終わりと言うことはなく、即効薬もない。
徹底的な事故原因の追求が、重大事故を未然に防ぐことにつながる」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int100224.html

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