2010年3月12日金曜日

親と向き合う(2)「苦情は宝」発想変え対応

(読売 2月20日)

保護者対応の悩みを抱えこまないよう、学校全体で工夫。

東海地方の公立高校の男性教諭(37)は、
保護者とのトラブルを抱えたことが何度かある。
特にひどかったのが、希望大学への推薦入学に成績が足りない
3年生の母親から、調査書の書き換えを求められたケース。

即座に断ったが、しばらくすると、昼夜、土日を問わず
携帯に電話が入るようになった。
「調査書を改ざんすることぐらい簡単でしょ」と強い口調で迫られた。
電話は数日間で収まったが、この間、誰にも相談できなかった。

「1年間、問題なく終えるのが当たり前とされる世界。
保護者トラブルが起きれば教員のミスとされ、
話すのは恥という気持ちがある。
当然、対応がこじれても、周りに相談しづらい」と明かす。

東京都教職員互助会運営の三楽病院では、
保護者とのトラブルを抱えて受診する教師が増えている。
精神神経科の真金薫子部長によると、いい教育を目指すあまり、
親の要求に応えようと頑張り過ぎ、ギリギリまで
心の病に気づかないケースが多い。
特に、異動1年目や新任の教師が陥りやすい。

「同僚との会話が少なくなったり、書類の締め切りが
間に合わなくなったりと、ささいな変化を見逃さないこと」と真金部長。
「何でも遠慮せずに話せる雰囲気を、普段から職場に
作っておくことが大切」

「早退は、子供ひとりで帰さない」、
「跳び箱は、マットを敷き指導する」、
「学校の保護者以外にも挨拶を」……。

東京都東村山市立大岱小学校の職員室の壁には、
30の個条書きで埋まった模造紙が張られている。
保護者から来るどんな苦情でも書き出し、
学校全体で受け止める仕組み。

提案した西留安雄校長(60)は、
「保護者から指摘されて当然のことを、一学級の問題として
とらえてはいけない。
視覚化して全員が共有することで、苦情が宝になることもある」

数年前まで、親のクレームが少なくなかった。
発想を転換した。
「うちの子は漢字を覚えない。しっかりと指導してほしい」と
要望が来れば、独自の漢字検定を作り、学校全体で競わせた。
児童のノートの書き方指導に注文があれば、
きれいなノートを表彰する大会を企画。

若手の指導・育成にも力を入れる。
職員会議の時間をなるべく削って、指導役のベテラン教師が
若手教師に寄り添い、気づいたことを話し合える環境をつくった。

西留校長は、「忙しいことを理由に、変えようとしない学校もあるが、
子どもの願いに応えるという教師の初心に戻れば、
学校はいくらでも変えられる」と強調する。

◆心の病

教師の場合、強いストレスから気分が落ち込んだり、
やる気が出なくなったりする適応障害になることが多い。
2008年度、病気休職した公立小中高校などの教職員
8578人のうち、精神性疾患が原因で休んだのは
63%の5400人、その割合は年々高まっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100220-OYT8T00279.htm

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