2010年6月28日月曜日

目の健康講座 「白内障とは?」テーマに 早期の発見・治療を

(2010年6月20日 毎日新聞社)

「白内障とは?」をテーマに掲げた「目の健康講座」
(社団法人大阪府眼科医会主催)。
近畿大学医学部の下村嘉一教授が、白内障の原因、症状、
治療の最新情報について、分かりやすく講演。

◇人生の光、失わぬよう--服部吉幸・大阪府眼科医会会長

日本人の平均寿命は、男性が79歳で世界3位、女性が86歳で同1位。
長寿の背景には、誰でもいつでもどこででも、
良質の医療が受けられる「国民皆保険制度」の存在
医学・医療の進歩による三大死因疾患(がん、心疾患、脳血管疾患)
の克服、マス・メディアやインターネットの普及で病気に対する知識が
豊富になり、健康に対する意識が高まっていること。

長寿化社会とはいえ、「光」を失っては楽しい人生にはならない。
目の病気では、早期発見、早期治療が大切。
本講座で大いに学んで、目の健康の保持・増進に役立てほしい。

◇点眼・内服薬や手術で対応--下村嘉一・近畿大学教授

白内障は、昔から「そこひ」、「しろそこひ」と呼ばれてきた
目の代表的な病気。

目の仕組みの復習から。
外部に面した角膜(黒目)から光が入り、水晶体(レンズ)と硝子体を
通って、右側の網膜(フィルム)に達する。
網膜の最深部には視神経が集中し、ここから脳に視覚が伝わって
初めて「モノが見え」る。

白内障は、水晶体が主に加齢に伴って混濁(白濁)し、
視力が低下していく病気、「加齢性白内障」が一般的。

白内障のリスク要因では年齢のほか、高血圧や高脂血症、
糖尿病などの「生活習慣病」。
ステロイドやトランキライザーなど、薬剤に起因する白内障も。
アトピー性の白内障も、若年層で増えている。

50代以上で、加齢以外に原因が見当たらない場合、
「加齢性白内障」と診断、大部分の白内障はこれに相当。

白内障は、3段階で進行。
「初発(未熟)」、「成熟」、「過熟」の順。
症状は、「モノがかすんで見える」、「日光が異様にまぶしい」、
「昼見えにくく、夜見やすい」、「モノが二重三重に見える」など。
「核白内障」は、水晶体の核が混濁するもので、
水晶体が分厚くなって「凸レンズ化」し、近視化することで
一時的に手元が見えやすくなることも。
「成熟」、「過熟」と進むにつれ、
「かすみ」などの症状が強くなっていく。

治療はまず、点眼・内服薬療法で症状の進行を遅らせ、
症状が生活に支障をきたすほどになった時以降、
外科手術を検討・実施。

白内障の手術の歴史をみると、罹患した水晶体を
そっくり除去する嚢内法、
80年代半ば以降、水晶体のうち病因となる「核と皮質」を
除去する嚢外法、
「超音波乳化吸引術」で、水晶体の「核と皮質」を除去して
眼内レンズを入れる処置--となり、
今はこの超音波乳化吸引術が主流。

手順は、(1)点眼麻酔などによる局所麻酔、
(2)水晶体の袋(嚢)に円形の「窓」を開ける(前嚢切開)、
(3)水晶体の濁りを除去する(超音波乳化吸引術)、
(4)水晶体の嚢内に、開くと直径6mmの折りたたみ式の
眼内レンズを装入、
(5)眼内の洗浄--。
最近は、日帰り手術の例も増えている。

眼内レンズの材質にはアクリルソフトと、コンタクトレンズと
同じ「PMMA」の2種類。
現在は単焦点レンズが一般的、遠近両用の多焦点レンズも。
多焦点レンズは、まだ医療保険適用外、
装着するには自己負担で70万円ほどの費用。

手術をする時期は、通常は「生活・仕事に支障が出始めた時」、
「昼間、外がまぶしくて見づらい」が目安、
「視力の面で運転免許の取得・更新に支障がある」という
「節目」が目安となるケースも。

白内障の手術は、重症の心臓病や糖尿病、認知症などの
異常さえなければ、年齢的な上限はない。
私も、100歳を超える方の手術を2例実施。

白内障の手術後、眼内レンズを入れた方の2~3割の比率で、
水晶体の後嚢に濁りが発生し、再通院されるケース。
「後発白内障」と呼ばれ、これは数分間のレーザー治療で
簡単に治すことができる。
……………………………………………………
◆質疑応答

下村教授と、大阪府眼科医会の森下清文理事(司会)、
森山穂積理事、宮浦徹理事の計4人が回答。

◇78歳女性

2年前、白内障の手術を受け、右の視力が最近、落ちてきた。
眼科医の先生から、「後発白内障」だと診断。

◇答え

講演にもあったように、後発白内障の発生率は2~3割。
水晶体の上皮細胞の残りが増殖、YAGレーザーと呼ばれる装置で
濁った膜を破砕すれば、治せる。

◇75歳女性

両目とも視力0・3となり、裁縫ができなくなった。
白内障手術を勧められたが、入院、日帰りのどちらがいいか。

◇答え

白内障手術は、以前は数日間の入院が普通。
手術機器や手術手技の進歩、眼内レンズの改良で
切開する傷口が小さくなるなど、負担は軽減。
心臓病など病気がなく、病院に近い所に住んでいる人などは、
日帰り手術でも大丈夫。
最終的には、主治医と相談して決められるのがいい。

◇50歳男性

緑内障の治療で、主治医から「夏だから、眼圧が低く出る」と。
季節と眼圧に関係はある?

◇答え

眼圧とは「目の硬さ」。
1~5mmHgの差で、寒い冬の方が高めに出る傾向。
1日の間でも、時間帯で眼圧には差が出る。

◇60歳女性

「正常眼圧緑内障」の治療を受けている。
食事などで気をつけることは?

◇答え

注意はないが、禁煙は大切な留意点。

◇56歳男性

閉塞隅角緑内障の治療中。胃カメラによる検査の際、
「緑内障はないか」と聞かれた。
緑内障だと、制限される薬があるということか?

◇答え

閉塞隅角緑内障の際、瞳を大きくする作用のある薬だと
緑内障発作を生じることがある。このため注意。

◇55歳男性

視野の中に何か黒いものがちらつき、眼科医に相談。
「飛蚊症」で、心配はないといわれたが……。

◇答え

飛蚊症は、硝子体の中の濁りが原因で、
「ひも」、「星」、「点」、「輪」など、いろいろな見え方をする。
多くが加齢によって起こるが、中には網膜に孔が開いたり、
網膜剥離が生じたりと、怖いケースも。
飛蚊症を自覚した時、眼科専門医の診察を受けてほしい。

◇53歳男性

直線がゆがんで見え、視力も0・3まで低下。
「加齢黄斑変性」と診断、光線力学療法で0・7まで改善。

◇答え

加齢黄斑変性は、網膜の下に位置する脈絡膜から
新生血管が侵入、出血を繰り返す病気。
見ようとする中心がゆがんで見えることで、気付くケースが多い。
光線力学療法は、新生血管に選択的に取り込まれる物質を
静脈に注入し、弱いレーザーを当てるもので、
網膜を傷つけず、新生血管をふさぐことができる。
再発もあり、現在は新しい治療法である抗新生血管抑制薬
などとの併用療法で、治療効果を上げている。

◇多数

ドライアイについて教えて。

◇答え

加齢に伴って涙の分泌が減り、そのため目が乾くという症状で、
最近は加齢以外にパソコン、テレビ、ゲームなどに集中し過ぎて
「瞬き」が少なくなり、乾いて角膜や結膜に障害が起きる。
「瞬きなし」で、10秒間我慢できるかどうかが目安。
我慢できなければ、ドライアイを疑っていい。
ドライアイの治療では、眼科医が処方できる、いい目薬がある。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/21/121831/

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