(2010年6月22日 共同通信社)
岐阜県各務原市の高家寺住職、北川宥智さん(46)は、
知人らを招いて食事会を開いた。
調理するのは、西邨マユミさん(53)。
主食は玄米。
「命あるものを丸ごと食べてこそ、調和がとれる」という考えから、
ニンジン、ゴボウは皮付きで千切りに。
野菜の煮あえに砂糖は使わない。
その土地の素材を使う-。
西邨さんは、「マクロビオティック(穀物菜食)」の料理人。
日本の伝統食から生まれたこの食思想が今、
海外での評価を受けて日本に逆輸入され、
"マクロビ"の名で普及しつつある。
西邨さんは、1982年に渡米。
米国で長くマクロビオティックの普及に当たっている
久司道夫氏(84)のもとで学び、2001年から7年間、
歌手マドンナさんのプライベートシェフを務めた。
ヒジキをサラダにするなど、西洋人にも食べやすくする工夫を重ねた。
08年帰国後、日本でも多くの人に食べ続けてもらうことが大事と、
「30回はかむ」、「化学調味料は使わない」などを原則に、
緩やかな「プチマクロ」を提唱。
「マクロビオティックはおいしくない、という先入観があるから、
まずは食べてもらうのが大事」
西邨さんが炊いた玄米は、「ぼそぼそ」といった
イメージを覆す軟らかさ。
ひじきレンコンや野菜の煮あえなど、砂糖なしでもおいしい。
高家寺の北川住職は、「現代の精進料理は、肉や魚を使わない
というだけで、伝統的な日本の食事とは懸け離れ、
根源的なものを失ってしまった」
「西邨さんの料理は、四季に合わせた伝統食だが、
新しいものを取り入れ続けている」
マクロビオティックは、明治時代に唱えられた食養生法を、
桜沢如一(1893~1966)が継承・発展、
フランス語の「長寿法」から命名。
日本ではあまり普及せず、桜沢が50年ごろから弟子の久司らを
欧米などに派遣し、海外に広まっていった。
米国では、愛好者が豆腐などの食材を作り始め、
TOFU、MISOやDAIKONなどの和名がそのまま通じる。
「日本食ブームのときも、輸入品でなく、しょうゆやみそが手に入った。
それもあって、ここ10年くらいでマクロビが一気に広まった」
マドンナさんのほか、ハリウッドスターら海外のセレブの間でも人気に。
世界各地の料理をアレンジしたマクロビメニューが、
新しい料理として日本に再上陸し、雑誌の特集やレシピ本も出版、
20~30代の女性を中心に愛好者を増やしている。
「マクロビオティックが昔ながらの日本食と伝えると、
みな驚きます」と西邨さん。
東京都の主婦田中里子さん(30)は、マクロビの料理教室
「クシマクロビオティック アカデミィ」で学んだ。
結婚前、ほとんど料理をしなかったが、
本屋で目にしたレシピ本にひかれた。
スペイン人講師のパトリシオ・ガルシア・デ・パレデスさん(39)
から教わる、きんぴらなど日本食の作り方-。
「日本人が当たり前に食べているみそやしょうゆを、
客観的に評価されたと感じた」と田中さん。
「当たり前すぎて、自分たちの文化のよさに気付かないのかも」
とパレデスさん。
母親が作る日本食で育ち、約10年前に来日したパレデスさんは、
日本人の食生活が欧米化し、伝統食が姿を消しつつあることに驚いた。
「日本の伝統食は、主食と副食の割合がすばらしい。
野菜を使った副菜や、海藻や発酵食品など体にいい
食材の種類も豊富。
現代の日本人が忘れてしまったものを、
スペイン人の私が教えているのが、おもしろい」
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/22/121922/
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