(読売 6月19日)
2018年冬季五輪開催都市は、来年7月のIOC総会で決まる。
立候補を表明しているのは、平昌(ピョンチャン)(韓国)、
アヌシー(仏)、ミュンヘン(独)の3都市。
注目を集めているのが、ミュンヘンだ。
1972年に夏季五輪を開催しているミュンヘンの最大の特色は、
「同じ都市で夏冬開催」。
アピールのため、五輪期間中にバンクーバーを訪れた
フィギュアスケートの元女王カタリナ・ビットは、
「夏冬に限定せず、ミュンヘンは若者をスポーツへいざなう力がある」
過去に同じ都市が夏冬五輪を開催した例はなく、
アピールポイントにはなるが、それだけでは決め手にならない。
大事なのは、なぜ五輪を開催するかという「理念」だ。
「五輪招致で最も説得が難しいのは、政府でもIOCでも
国内の五輪委員会でもない。一般の人々だ。
なぜ五輪を招致するのか、五輪開催で何がもたらされるのか、
厳しく追及してくる」
2012年ロンドン五輪組織委会長を務めるセバスチャン・コー。
1980年モスクワ五輪ボイコットを決めた英国政府に反対し、
自主参加の道を開いた英国五輪委。
その際、コーは世論の支援を盛り上げる原動力となり、
自らも同五輪陸上1500mで金メダルを獲得。
コーは、自らの経験を踏まえ、五輪が若者の生き方を
いかに前向きに触発するか、貴重な体験を生むかを訴えて、
人々の心を動かし、2005年のIOC総会で、
史上最多となる3度目の五輪開催を勝ち取った。
1959年5月、東京が64年夏季五輪開催を勝ち取った
IOC総会における、平沢和重の演説は語り草だ。
「西洋の人は、私たちの国を極東(ファー・イースト)と呼ぶが、
ジェット機が発達したいま、距離はファー(遠い)ではない。
西洋で咲いた花を、東洋でも咲かせたい」
元外交官で当時NHK解説委員の平沢は、
堪能な英語を駆使し出席者の心をとらえた。
1回目の投票で、東京は過半数を獲得。
アジア初の五輪開催が決まった。
昨年、五輪開催を勝ち取ったリオデジャネイロの決め手も、
「南米初」だった。
今後、日本が五輪招致を目指すなら、
すでに3度の開催経験がある現在、「初開催」のマジックは使えない。
なぜ五輪を呼ぶのか――。
議論を深め、その過程で日本独自のスポーツ観や、
スポーツと社会の新たな関係を国内外に発信できるとすれば、
それこそが「スポーツ立国」につながる。
http://www.yomiuri.co.jp/sports/feature/rikkoku/ri20100619_01.htm
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