(2010年6月22日 読売新聞)
学校にも行かず、仕事をしているわけでもない
若年無業者(ニート)が、日本で話題になり始めたのは2004年。
働く意欲はあるのに職に就けない若者は、139万人(09年)、
働く20代では3割が非正規雇用であるなど、
若者の雇用は不安定さを増している。
失業は、経済的な問題にとどまらず、ストレスを増やし、
心身の健康を害する。
1990年代末、ニートという言葉が生まれた場所でもある
イギリスでは、雇用問題も健康格差対策の柱の一つと位置づけ、
いち早く取り組みが進められてきた。
ロンドンのレストラン「フィフティーン」。
有名若手シェフのジェイミー・オリバーさんが2002年、
無職の貧しい若者に、料理人の訓練をするために作った。
薬物依存など困難を抱えた若者を、年15人程度教育し、
社会に送り出す。
サラ・ソーンヒルさん(19)は、09年9月から訓練生となった。
母親と2人暮らし。
専門学校を退学してから自暴自棄になり、
麻薬や酒浸りの不健康な毎日を送っていた。
フィフティーンで働くようになってから、生活は一変。
「朝起きて、特に理由もなく幸せ。
自分が規則正しい生活をしていることも好き」と笑み。
訓練生は、様々な問題を抱えているだけに、
遅刻やサボりなどは日常茶飯事。
気持ちをコントロールするための研修を毎週行い、
毎日全員に1対1のカウンセリングを行う。
サラさんも、毎日「あなたならやり通せる」と励まされて乗り切った。
指導員のトロミー・ドッドさんは、「職業訓練を通じて、
精神面での賢さを身に着けさせるのも重要」
店の09年の売上高は約6億円。
訓練の費用は全額売り上げからまかない、訓練生には
週約1万3500円の手当が支給。
経営は安定し、国外など4店舗に拡大。
フィフティーンのように、社会貢献をビジネスとして成り立たせる
「社会的企業」の数は、支援組織の設立など政府の後押しで、
イギリス国内で6万2000社(09年)にまで増え、
80万人の雇用を生み、市場規模は3・6兆円に達する。
地域によっては、国営医療サービス(NHS)が、
学生やニートを対象とした職業訓練所を運営している例も。
世界保健機関(WHO)は、報告書「健康の社会的決定要因」の中で、
03年、失業の不安だけでも、精神衛生の悪化を招き、
心臓疾患の危険を高めると警告。
各国に対策を求めている。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/22/121930/
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