(2010年6月21日 読売新聞)
低所得者層の住む集合住宅が立ち並ぶ
ロンドン・エレファント&キャッスルの小さなパブ「タンカード」。
平日の夕方、地元の常連客でほぼ満席の店内で、
作業着姿でビールを飲んでいたグループに、
「日本じゃ、まだ店内でたばこが吸えるんだって?」と驚かれた。
がんや心臓病などの原因となるたばこ対策は、健康政策の柱。
イングランドでは2007年7月、スコットランドなどに続き、
飲食店を含む公共の場所を全面禁煙とした。
違反には罰金もある。
労働者階級の憩いの場であるパブの全面禁煙は、
経営者団体らの強い反対にもかかわらず、強力に推し進められた。
これには、喫煙率の高い低所得者層の、
たばこ離れを促す意味合いもあった。
英国の喫煙率は22%(07年)、10年前の28%から低下。
社会経済的な最上層の喫煙率は16%、
最下層では30%と約2倍高い。
喫煙が関係した病気による死亡率は、社会階層の最上層では4%、
最下層では19%だったという研究もあり、
喫煙が健康に与える影響は、貧富によって差があることも明らか。
全面禁煙が施行された当時、英国勤務だった
厚生労働省年金局の武内和久さんは、
「地域ごとの喫煙率と経済指標が並べて報道されるなど、
健康格差対策として国民に理解されたことが推進力となった」
対策として、価格引き上げが効果的とされるのも、
購買力の低い層が買えないようにとの狙い。
英国では、1箱1000円超と10年前より2倍近く引き上げられた。
日本の成人男性の喫煙率は36・8%、先進国の中で極めて高い。
最低所得層の喫煙者の割合は、男性で最高所得層の1・3倍、
女性で2・0倍との研究もあるが、対策は遅れている。
たばこ価格は、今年10月、ようやく1箱400円程度に
引き上げの予定。
厚生労働省は2月、飲食店も含めた公共の場所を
全面禁煙にするよう求める通知を出したが、努力目標にとどまる。
売り上げが減少するのでは、との懸念から反対する声も。
低所得者層の常連客が多いロンドン南東のパブ
「プリンス・オブ・ウェールズ」。
「もっと家族を、もっと子どもを」を合言葉に、
食事メニューを充実させたところ、家族連れが増え、
売り上げは禁煙前の25%増。
店主のアンディ・マーシュさん(44)は、
「パブも、健康的に変わらないと生き残れない」
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/22/121929/
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