2010年6月23日水曜日

免疫 まじめすぎると低下 乳酸菌摂取で向上も

(2010年6月12日 毎日新聞社)

長生きの秘訣は何か?
一つは、がんやウイルスと闘う免疫力の維持といってよい。
では、どんなライフスタイルが免疫力を上げるのか?

「『まじめ』は長寿を縮める 『不良』長寿のすすめ」(宝島社新書)
の著者でもある奥村康・順天堂大医学部特任教授(免疫学)が、
東京都内のセミナーで講演。

「まじめな人ほど早死にする」が奥村さんの持論。
まじめ過ぎると、自分で何でも抱え込み、手が抜けない。
小さなことにくよくよし、気持ちの切り替えができない。
やがてストレスがたまり、病気になる。
つまり、まじめ過ぎると、免疫力が落ちる。

その良い例が、フィンランド症候群
1970年代、フィンランド政府は比較的裕福な40~45歳の男性
1200人を二つのグループに分け、一方は健康管理をしっかり行い、
もう一方は何もしないようにし、どちらが病気が少なくなるかを
15年間追跡した。

健康管理をしっかりするグループは、定期的に健康診断を受け、
血圧の高い人は降圧剤などで治療。
塩分や砂糖、アルコールの摂取を控え、運動も行った。
何もしないグループは好きなものを食べ、飲酒や喫煙も自由にした。

15年後、意外な結果が出た。
なんと健康管理をしっかりと行ったまじめグループの方が
死亡率が高く、自殺や心臓病なども多かった。
奥村さんは、「健康管理に、あまりにも神経質になると逆効果。
いいかげんにやっている方が、免疫力が高まったのではないか」

何事もほどほどに楽しみ、気楽に過ごすのがよい。
調査結果は、忙しい現代人へのそんな戒めかもしれない。

◆NK細胞

免疫力を維持する上で大事なのが、NK細胞の働き。
NK細胞はリンパ球の一種で、体外から侵入したウイルスを
撃退したり、がん細胞を殺す働きをする。

人の体内では、1日に約1兆個の細胞が生まれ変わり、
5000個前後が、がん化するなど出来損ないの細胞になる。
こうした出来損ないを撃退するのがNK細胞。
NK細胞の働きが高いと、がんになりにくい。

奥村さんは、これをマウスの実験で確かめた。
NK細胞のないマウスを実験用に作り出し、死ぬまでの経過を
見たところ、がんが多発することを確かめることができた。
動物実験を裏付けるように、人間でもNK細胞の活性が高いと
がんになりにくいとの研究報告も。

NK細胞の働きは、朝起きてから徐々に高くなり、
夜11時を過ぎると低くなる。
深夜まで起きて仕事をしていると、活性度合いは落ちる。
奥村さんは、「深夜から朝方まで勤務する昼夜逆転の勤務形態は、
NK細胞の活性を低くする」
あまりにも厳格な生活は良くないが、かといって昼夜逆転の生活も、
健康を損なってしまう。

NK細胞は、精神的なストレスに非常に弱い。
受験生は、テスト前になると活性が下がりやすく、
風邪をひきやすくなる。
こんな時は、細かいことにくよくよしないこと。
友達と会って楽しく話し、気晴らしに好きなものを食べ、よく笑う。
そんな過ごし方がいいようだ。

◆R-1乳酸菌

食べ物でも、NK細胞の活性を上げるとされるものがある。
キノコや納豆、ヨーグルトの乳酸菌など。

明治乳業食機能科学研究所の池上秀二研究員によると、
R-1乳酸菌を含むヨーグルトをマウスに与えたところ、
NK細胞の活性が高くなった。

人を対象とした試験も行われている。
山形県舟形町と佐賀県有田町で、59~85歳の住民計142人に、
同種のヨーグルトを1日90g、8~12週間食べてもらい、
食べない群と比べた。
その結果、ヨーグルトを食べた群は、食べる前より
風邪をひくリスクが低下した。

インフルエンザウイルスに感染させたマウスに、
同種のヨーグルトを食べさせた実験では、ウイルスが減るなど
感染リスクを低下させる作用もあった。

池上さんは、このメカニズムについて
「乳酸菌とその菌が作り出す多糖類が、T細胞に働き、
T細胞が作る生理活性物質(インターフェロンガンマ)を介し、
NK細胞が活性化するのではないか」

ヨーグルトには腸の働きを整える以外にも、さまざまな効用がある。
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◆奥村康教授が勧める長寿の習慣

(1)よく出歩く
(2)ゲラゲラよく笑う
(3)夜更かしはしない
(4)細かいことは気にしない
(5)何でも、ほどよく食べる
(6)夫婦仲を良くするなど異性に関心を持つ
(7)適度に運動する
(8)趣味を持つ
(9)腹を割って話す友達を持つ
(10)ヨーグルト、納豆などの発酵食品やキノコをよく食べる

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/14/121565/

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