(読売 6月10日)
教室のスクリーンに、湯気の立つラーメンの写真が映し出された。
「この店は、学生証を提示すると、めんの量が1・5倍になります」
学生の一人が、パソコンを操作しながら滑らかな口調で発表すると、
小さな笑いがわき起こった。
金沢工業大学の1年生の必修科目「修学基礎」。
授業のテーマは、グループ討議の発表。
ロボティクス学科1年、寺尾涼さん(18)たちの班は、
大学近くのラーメン店5軒を取材し、
味の特徴などをまとめてプレゼンテーションした。
「足を使ってインタビューしたのは良かったけれど、
地図を使う場合は出典を明示すること」
清水節講師(32)の指摘に、寺尾さんは、
「寝不足気味でうっかりしていた」と思わず口走った。
「自ら考え行動する技術者」の養成を目指す同大は、
初年次からキャリア教育に取り組む。
その柱となるのが、修学基礎で取り組む「キャリアポートフォリオ」。
「高校までの自分史、大学卒業後のキャリア像、自分の特性と
目標などを文章にまとめて記録させる。
そこから在学中に取り組むべき課題が見えてくれば、
学生生活の意欲も高まり、就職活動で物語性のある
エントリーシートを書くのにも役立つ」
学生部長の藤本元啓教授(54)が狙いを明かす。
建築学科3年の吉本千恵さん(20)は、
「なんとなく進学したが、大学は将来のことを考えなければいけない
場所なんだと、入学してすぐ意識が切り替わった」
「書くことは苦手だったけれども、自己認識を深めることができた」、
ロボティクス学科4年の守屋裕之さん(21)。
「教師を目指すか、設計士か、揺れた時期もあったが、
自分の思いを記録していくことによって、
企業人には向いていないことが分かった」
藤本教授は、「キャリア形成は、大学で終わるのではなく、
自己成長していくために一生続く」と強調。
社会に出てから独り立ちして、道を切りひらく力をつけるのが、
同大が目指すキャリア教育。
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大学生の就職率が、就職氷河期以来の落ち込みを記録するなか、
文部科学省は学生の就業力育成支援事業に乗り出す。
キャリア教育に力を注ぐ先進校の実践を通して、
就業力のあり方を考えたい。
◆就業力育成支援事業
来年度から施行される大学設置基準によると、
学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的・職業的自立を
図るために必要な能力が就業力。
文科省は、キャリア教育に積極的に取り組む大学・短大を公募、
8月までに約130校を選定、5年間財政支援する。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100610-OYT8T00233.htm
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