2010年6月20日日曜日

大学の実力 就業力(1)文章で「自分」まとめる

(読売 6月10日)

教室のスクリーンに、湯気の立つラーメンの写真が映し出された。
「この店は、学生証を提示すると、めんの量が1・5倍になります」
学生の一人が、パソコンを操作しながら滑らかな口調で発表すると、
小さな笑いがわき起こった。

金沢工業大学の1年生の必修科目「修学基礎」。
授業のテーマは、グループ討議の発表。
ロボティクス学科1年、寺尾涼さん(18)たちの班は、
大学近くのラーメン店5軒を取材し、
味の特徴などをまとめてプレゼンテーションした。

「足を使ってインタビューしたのは良かったけれど、
地図を使う場合は出典を明示すること」
清水節講師(32)の指摘に、寺尾さんは、
「寝不足気味でうっかりしていた」と思わず口走った。

「自ら考え行動する技術者」の養成を目指す同大は、
初年次からキャリア教育に取り組む。
その柱となるのが、修学基礎で取り組む「キャリアポートフォリオ」。

「高校までの自分史、大学卒業後のキャリア像、自分の特性と
目標などを文章にまとめて記録させる。
そこから在学中に取り組むべき課題が見えてくれば、
学生生活の意欲も高まり、就職活動で物語性のある
エントリーシートを書くのにも役立つ」
学生部長の藤本元啓教授(54)が狙いを明かす。

建築学科3年の吉本千恵さん(20)は、
「なんとなく進学したが、大学は将来のことを考えなければいけない
場所なんだと、入学してすぐ意識が切り替わった」

「書くことは苦手だったけれども、自己認識を深めることができた」、
ロボティクス学科4年の守屋裕之さん(21)。
「教師を目指すか、設計士か、揺れた時期もあったが、
自分の思いを記録していくことによって、
企業人には向いていないことが分かった」

藤本教授は、「キャリア形成は、大学で終わるのではなく、
自己成長していくために一生続く」と強調。
社会に出てから独り立ちして、道を切りひらく力をつけるのが、
同大が目指すキャリア教育。
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大学生の就職率が、就職氷河期以来の落ち込みを記録するなか、
文部科学省は学生の就業力育成支援事業に乗り出す。
キャリア教育に力を注ぐ先進校の実践を通して、
就業力のあり方を考えたい。

◆就業力育成支援事業

来年度から施行される大学設置基準によると、
学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的・職業的自立を
図るために必要な能力が就業力。
文科省は、キャリア教育に積極的に取り組む大学・短大を公募、
8月までに約130校を選定、5年間財政支援する。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100610-OYT8T00233.htm

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