(2010年6月9日 共同通信社)
「私は、懲役を受けるようなことをしていない。
国家は、法律で医師免許を得たものだけから、
治療を受けろというが、それなら、国家が患者の生命に
責任を負ってくれるのか。
私の願いは、安心して病気の治療をさせてほしいということ」
ソウル市東大門区の自宅で韓方医、張炳斗(チャン・ビョントゥ)は
103歳とは思えないはっきりした口調で自らの心情を語った。
最近の韓国では、韓国で発達した「漢方」として、
「漢方」を「韓方」と表記することが多い。
張は、環境や食生活の変化により、昔の漢方だけでは
今日の現実に効果的に対応できない。
中国の三国志演義に、後漢末期の「華佗」という伝説的な名医が登場。
民衆に「神医」といわれた。
がんや難しい病気の治療をしてほしいと訴える患者たちは、
張を現代の「華佗」とたたえる。
張は、医師免許を持っておらず、「無免許医師」と批判。
張は、2006年に医師免許なく医療行為をしたとして訴えられ、
同年12月に一審で懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決。
07年、二審も一審と同じ量刑、現在、大法院(最高裁判所)で係争中。
張は今、治療をしたくてもできない。
1906年10月、韓国南部の全羅北道任実郡で、
4人きょうだいの2番目に生まれた。
生後2カ月の時、やけどで背中がひどくただれ、
10歳になってようやく治った。
両親は長く生きることができないと思い、それまで出生届を出さず、
戸籍上は16年生まれ。
背中のただれを治してくれたのは、医師だった母方の祖父。
その祖父から、背中の病気の治療法を教わったが、
「治療法は、誰にも言ってはいけない」と口止めされた。
張が14歳の時、父と2歳上の兄が亡くなり、母方の祖父も死亡。
母は、生活のために田を売り、張は14歳で一家を
支えなくてはならなくなり、学校にも行けなかった。
食堂の下働きなどさまざまな仕事をし、
ドジョウを捕って売り、生計を支えるなどした。
17、18歳ころから薬草に興味を持ち、約3千種類の薬草を研究。
自分で口に入れたり、犬に食べさせたりしながら効能を調べた。
父が生きていたころ、よく家を訪れた林学(イム・ハク)という道士がいた。
林学は張をかわいがり、「おまえは薬を知り、かわいそうな民衆を
病気から救わねばならない」と、張を連れ、
韓国南部にある智異山に入りともに修行をし、
山野をめぐり薬草を教えた。
張は、さらに独自の修行を積み、観相学なども学んだ。
31歳で17歳の妻と結婚、妻は戸籍を信じて21歳と思っていた。
1男1女をもうけた。
息子を小学校しか行かせなかった。
息子は、大学入試の検定試験を受け、大学へ進み、
韓医学を専攻して今は韓方医となっている。
張はその後、人相見や鉱脈探しなどの仕事を経て、
30年以上前から韓方医として活動を始めた。
医師免許はなかったが、人々はがんや持病に大きな効果があったと、
張の治療を求めて集まった。
張は、薬の調剤方法を韓方医をしている息子にも教えない。
薬剤の成分なども秘密。
「薬は、患者の状態などを見て判断するもので、
一律的に定めることができない。
患者を治す調剤方法は、心から心に伝えるものだ。
まだそれを伝えるだけの人物に出会っていない」
2006年に訴えられた後も、張の治療によって病気が好転したという
患者たちは診療を続けてほしいと訴えた。
韓国マスコミでも、張の事件が報じられた。
がんや持病などの治療を受けて効果があったという
患者たちの声が多数、紹介、現代医療から見放された患者や
家族から多くの問い合わせが寄せられるなど、大きな反響。
「治療の効果が出ると、本当に気分が良くなる。
死に向かっている人が私の処方で生き返り、
『先生、ありがとうございます』と言ってくれる時が、
自分が生きている目的に目覚める瞬間だ」
患者たちに再び治療することを願いながら、裁判所の判断を待つ日々。
韓国の著名な詩人、金芝河(キム・ジハ)は、
張炳斗(チャン・ビョントゥ)の医術を高く評価、
その治療を認めるべきだと主張する支持者の一人。
金は、抵抗詩人として軍事政権時代に5年9カ月を獄中で送った。
長い独房生活から精神に異常をきたし、12回も入院し、
3回も自殺を図った。
そんな金が張に出会った。
張はまず、「一文の値打ちもない憤怒を遠ざけなさい」と。
張は、初めて会った金について、「正直な人間、
一つの道を歩む人だと思った。たくさん苦労してきたと感じた」
金は張の薬で、それまで手放すことができなかった
精神安定剤や睡眠薬などを絶つことができた。
約2カ月で、苦しみを与え続けた悪夢がうそのように消え、
安らぎを得た。
2人の息子は、金の精神障害に衝撃を受け、
極度のうつ症状に陥っていたが、これも張の治療で治った。
金は、「張先生の医学こそが、最高の生命学と信じる」と評価。
張の支持者たちは、インターネット上に、
「張炳斗おじいさんの生命医術を生かす集い」というサイトを立ち上げ、
その会員は約2万3千人。
張の支持者たちは、「代替医学」という観点から、
張の医療が許されるべきだと訴える。
現代医学で治せない病気については、医師免許がなくても
韓方などに特別な能力を持った者の治療が許されるべきだという主張。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/9/121416/
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