2010年6月16日水曜日

新聞で伸びる(5)生命科学の変化 身近に

(読売 6月3日)

「無性生殖と有性生殖の違いはイメージできたかな」
東京都豊島区の私立十文字高校で行われた2年の生物の授業。

アメーバなどの無性生殖では、クローンがたくさんでき、
両親から半分ずつ遺伝子をもらう有性生殖だと、
遺伝的に違った生物が生まれることを理解。

津吹卓教諭(59)が補足。
「僕は呼吸器が弱いから、空気が悪い所でバタッと倒れ、
死んじゃうかもしれない。
子どもがクローンだったら、津吹家は滅亡だね」
身近な話題も交えながら、生物界では有性生殖が圧倒的に多く、
生存に適した進化をすることを学びとり、
地球の歴史への理解を深めていく。

恐竜が絶滅したのは、地球への巨大いん石の衝突が原因だ、
という説について書かれた新聞記事のコピーが配られた。
様々な仮説がある中、国際研究チームによって論争に決着が
付けられ、それが権威ある科学誌サイエンスに載るという内容。

巨大いん石の衝突によって巻き起こされた大量のちりが、
太陽光を遮断して植物が死滅し、食物が減少したため、
恐竜は絶滅した。
地球温暖化が心配されているが、人間に影響が及ぶ範囲の話。
生物の大半が死滅するほどの、激しい規模の変化も起こる。
そのスケールは、生殖や進化の比ではないことを、
生徒たちは新聞記事によって気づかされた。

「取っつきやすく、身近で、新鮮な材料が新聞。
生徒たちの目の色が変わる」
「教科書だけでは物足りない。
教師が自分の授業を作る手段として、新聞は有益だ」

山梨県立塩山高校の広瀬志保教諭(45)も、
生物で新聞を教材に。
「生命科学は、目まぐるしく変化している。
その知識は、改訂まで数年かかる教科書では追いつけない」、
昨年から「生物交換日記」を、生徒たちと交わしている。

臓器移植法や再生医療など、ホットなテーマの新聞記事を
みつけては、「日記」ノートに張り、生徒たちに回覧する。
生徒たちは、それについて意見や感想を書き、
次の生徒に渡し、最後に教諭の手元に戻る。
生徒たちは、人の意見を知って、さらに自分の考えを
練ることができる。

新しい学習指導要領は、あらゆる教科での
言論活動の充実も求めている。
広瀬教諭は、「新聞記事を通じて、生物だけでなく、
文章表現の勉強にもなっている」と効果を実感。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100603-OYT8T00225.htm

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