2010年6月18日金曜日

新聞で伸びる(7)騎手の卵 記者に変身

(読売 6月5日)

「こんにちは、お昼のニュースです」
記事の切り抜きを持つ生徒たちが、
教室でキャスターになりきって解説。

毎日、関心のある記事を張っては感想を添え、
それを仲間に発表する。
授業に臨む8人の若者は、騎手の卵たちだ。

JRA(日本中央競馬会)運営の競馬学校(千葉県白井市)の
騎手課程。
中学を出たばかりの15~20歳までの22人が、
レースで馬にまたがる騎手を目指して、勉強に励んでいる。

騎手課程には、騎乗訓練や馬小屋での厩舎作業と、
飼育管理や疾病などを学ぶ学科授業がある。
生徒は、約3年間の学校生活を経て、騎手免許試験に合格し卒業。
晴れて騎手になったら、調教師が経営する厩舎に所属し、
騎乗経験を積む。

学科授業では、競馬に限らず、経済などの一般教養も教える。
2年前から、新聞活用教育(NIE)を組み込み、
新聞を読んで切り抜くことを習慣にするよう指導。

なぜ、騎手の育成に一般教養が必要なのか?
「人との付き合いがうまくできる人を育てるため」と、
同校総務課長の奥山隆一さん(41)。

レースに向けて、調教師から「この馬に乗れよ」と声を掛けられる
一流の騎手になるには、技術はもちろん、
調教師との信頼関係が欠かせない。
厳しい勝負の世界に生きる騎手にも、社会人に求められる
一般常識とコミュニケーション能力が重要。

中学校を卒業して間もない生徒に、
座学で理屈を並べるだけでは難しすぎる。
そこで注目したのが新聞。
「読む、聞く、話す、書く、の力が試される新聞活用は、
教養とコミュニケーション能力を身につける上で、
とても役に立つ」と奥山さん。

「私を取材して下さい」
競馬学校からの要請で、出前授業をした元中学校教諭で
読売新聞NIE企画デザイナーの鹿野川喜代美さん(60)は、
そう切り出し、騎手の卵の前で自己紹介を始めた。

見聞きした情報を、メモ帳に詳しく書き込む生徒たち。
鹿野川さんが、「私の印象は?」と尋ねると、
「元気がある」、「面白い」、「よくしゃべる」などと
様々な表現が上がった。
将来、取材されるかもしれない彼らに対し、鹿野川さんは、
「同じ人を取材しても、書き方はみんな違うんだよ」と
記事の多様性を説いた。

新聞で学んだ騎手たちが、競馬場の外でも活躍する日が、
いずれ来るかもしれない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100605-OYT8T00234.htm

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