(読売 6月2日)
「全然、違う!」
都立青山高校の教室で、社説を読み比べていた
2年生の女子生徒が、蛍光ペンを持つ手を止めた。
「この新聞には、『非核3原則堅持は当然』とあるけれど、
こっちは『見直すべき』と書いている」
5月12日の日本史の授業で扱った教材は、6紙の社説。
日本への核兵器持ち込みについて、日米間に暗黙の合意が
あったとされる密約がテーマ。
その存在を初めて認めた外務省の有識者委員会報告が、
3月9日公表、翌朝、各紙が一斉にその問題を社説にした。
43年前、佐藤栄作首相が表明した
「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核3原則は、
歴史の授業で一度は耳にするが、
長年、持ち込みについては密約説がささやかれてきた。
今回、「持ち込ませず」だけは空文だったことが決定的に。
それを受けた各紙の社説の見解は分かれた。
「3原則は守らなければ」という主張がある一方、
核を載せた船・航空機の寄港や通過は認める
「非核2・5原則」を検討すべき、との論調も。
グループごとに6紙の社説を熟読し、
非核3原則を続けるべきか否かを議論。
「日本は被爆国だし、世界的にも核軍縮が進んでいる」と
平和を唱える堅持派に対し、見直し派は
「核の存在で、核兵器を持つ国に威圧感を与えられる」
話が進むにつれ、沖縄の米軍基地問題や、
北朝鮮の情勢など、最近の話題へと広がった。
社説を使う授業を企画した本杉宏志教諭(49)は、
あえて各紙の違いが際立つテーマを選んだ。
「世の中には、いろいろな意見がある。
それらを読み取り、自分の考え方を組み立てる力を身につけさせたい」
目指すもう一つの狙いが、生きた歴史の学習。
「歴史は、今につながっている。
社説から、より現実的な問題を学べる」と本杉教諭。
古代史から順に授業を進めて、近現代史にたどり着く頃には
受験間近で時間切れ、といった授業も珍しくない。
極端な場合、日米が戦争をした史実さえ知らない生徒も。
同高で日本史を選択する2年生は、幕末から昭和までを学ぶ。
そこに社説を取り入れることで、生徒たちは、
今の日本を取り巻く国際情勢にも目を向ける。
おのずと、歴史の全体像をつかめるわけだ。
社説は一つの教材だが、工夫次第で、
学習効果の可能性は広がる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100602-OYT8T00333.htm
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