2010年6月22日火曜日

大学の実力 就業力(3)チーム研究 視野広げる

(読売 6月12日)

「人間は生まれながらにして自由であるのに、
いたるところで鉄鎖につながれている。
じゃあ、我々の自由を妨げる具体的な制約とは何か、考えてみよう」

18世紀の思想家ジャン・ジャック・ルソーの言葉を引用しながら、
問いかける教員。
その言葉を合図に、武蔵野大学の「基礎セルフディベロプメント」の
授業は、グループワークへと移った。

なかなか自分の意見を言えない学生をけしかけようと、
久富健教授(62)(教務部長)が次々と班を回り、議論に加わる。
学生から「親の考え」と声があがると、
「僕のおやじは、明治生まれの古い人間で、
大学生のときは反発ばかりしていた」と若かりし日を語ってきかせた。

文部科学省のGP(優れた取り組み)に2度選ばれた
同大のキャリア教育は、今年度から大きく変わった。
学部の壁を取り払った全学共通基礎課程を導入。
その柱が、基礎セルフだ。

学科横断の混成チームを編成した学生が、哲学、世界文学、
歴史学など七つのテーマを順番に学ぶ。
最後はチームで研究を行い、その成果を発表して、
課題発見・解決能力、チームワークなどを身につけてもらう
久富教授が改革の狙いを説明。

日本語・日本文学科1年の宮寺佑さん(19)は、
「高校までは、まわりの意見に合わせてしまうところがあったが、
相手の意見を聞きながら反論する力がついてきた」

授業支援スタッフ(SA)を務める環境学科4年の
夏井志保さん(21)は、IT企業から内々定を取り、
就職活動を終えたばかり。
「教員を目指して進学したが、初年次からキャリア開発科目を受け、
将来なりたい自分を考え続けた結果、もっと社会を知りたくなった。
社会人として、学校以外の職場も経験しておくべきと、
視野が広がった」

同大のキャリア教育を推進するのは、
キャリア教育が専門ではない専任教員。
外部講師に任せると、キャリア教育が教養・専門科目から
独立しているとの認識を学生に与えてしまう。

「キャリアと自分の専門科目とを関連づけるよう、教員の意識を改革し、
キャリア教育が学内で標準化されるよう目指す」と、
久富教授は今後の展望を熱く語る。

人生の歩み方を考えさせる教育が浸透し、
アカデミズムと一体化していけば、キャリア教育という言葉自体、
もはや必要なくなるのだろう。

◆GP

大学などが申請した教育プロジェクトの中から、
優れた取り組み(Good Practice)を選び、
財政支援する文科省の事業。
武蔵野大は、2003年度「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」、
07年度「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」に採択。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100612-OYT8T00293.htm

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