2010年9月13日月曜日

インサイド:ユース五輪 未来への礎/3 浸透した「交流重視」

(毎日 9月2日)

選手間の交流を促すユース五輪(シンガポール)で、
選手に好評だったプログラムは、近隣の島で冒険体験をする
「アイランドアドベンチャー」。

舞台は、シンガポール北岸から船で10分程度のウビン島。
選手は国籍や文化、宗教の違いを超えて、
15人程度のグループに分かれて活動。
ドラム缶などを使って、即席のいかだ作りに励み、
海へとこぎ出すと歓声が沸いた。
1日の定員は144人、選手の希望が殺到して、
200人が参加した日も。

◆語学の壁歯がゆさも

先月22日、日本からテニスの男女3選手が参加。
プエルトリコ、アルゼンチン、スペインなどの11人と親交を深めた。

米国留学経験があり、社交的な性格の牟田口恵美(16)=JITC=は、
「同じグループの選手は、スペイン語ばかり。
英語が通じなかった」と少し残念そうだったが、
英語を勉強中という石津幸恵(17)=土浦日大高=は、
「外国の選手と話すのは面白いし、みんなフレンドリーで楽しかった」と
すがすがしい顔をのぞかせた。

確かに「語学の壁」はある。
自転車競技男子の山本兆(18)=ダンガリー=は、
「みんなもっとストイックな人たちかと思ったけど、
友好的で心を開くことができた」と笑ったが、
「僕の英語は、ボディーランゲージ程度。
もっと話せたら、本当の交流ができるのに」と歯がゆさも。

外国選手にも、英語が話せない人が多く、
フランス語、スペイン語のみの選手も目立った。

◆国籍を超えた競技

言葉の違いを乗り越えた「交流重視」の姿勢は、
競技にも浸透していた。

トライアスロンや陸上、競泳、アーチェリーなどで、
大陸別や男女混合のユニークな種目が実施。

フェンシングは、政治的に対立する米国とキューバの選手が
同じ「アメリカ大陸チーム」でプレー、話題を呼んだ。

特に目を引いたのは、柔道の混合団体戦。
過去の世界選手権開催地の名前を取って、12チームを編成。
戦力が均等になるよう、今大会の男女8階級のメダリストを割り振り、
同一国・地域の選手が同じチームにならないようにも配慮。
メダリストではない選手も含め、1チームは7~8人。

女子63kg級優勝の田代未来(16)=淑徳高=は、
チーム「エッセン」(ドイツ、87年開催地)のメンバー。
準々決勝で、男子100kg級優勝の五十嵐涼亮(17)=国士舘高=を
擁した「千葉」(95年開催地)を破り、そのまま優勝。

試合中は、スペインの男子選手と一緒に声を振り絞って応援した
田代は「みんなで『ファイト!ファイト』って声を出し合い、
いい雰囲気で戦えました」とにこやかだ。

チーム戦では、多くの国の選手たちが初めて表彰台へ上がった。
エッセンのメンバーで、個人戦では男子81kg級で
早々と敗退したコンゴ共和国の選手は、全4試合で一本勝ち。
「金メダルを取ったのは初めて。
友人もたくさんできたし、みんなと五輪で再会できればいいな」
と感慨に浸った。

柔道混合団体の表彰式に、国旗、国歌は存在しなかった。
本来は、開閉会式に流れる五輪賛歌をバックに、
4本の五輪旗が掲げられた。
優勝、準優勝、3位の2チームの選手30人は、
表彰台で身を寄せ合うように並び、胸を張った。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100902ddm035050064000c.html

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