2010年9月15日水曜日

インサイド:ユース五輪 未来への礎/5止 「本家」改革の試金石

(毎日 9月4日)

ユース五輪(シンガポール)では、将来の五輪改革につなげようと、
競技内外で実験的な試みが行われた。

若者のスポーツ離れを防ごうと、遊びの要素を取り入れた
3人制バスケットボールのスリーオンスリー。
メダル争いによる勝利至上主義に陥らないよう、
国や地域を超えて男女混合チームの種目を採用した
トライアスロンや柔道などは、そのいい例。

◆混合種目に好意的

ユニークな種目を実際に観戦して回ったIOCジャック・ロゲ会長は、
「スリーオンスリーはとても興奮する。
ルールも分かりやすい」と評価。

五輪で採用することには、選手の人数が増えて肥大化につながる
可能性もあるため、まだ慎重姿勢だが、
国や地域を超えた男女混合種目は、「とても面白い。
将来の夏季五輪に加えることも考えている」と好意的。

競技外での文化・教育プログラムについても、
「五輪に組み込めるものも、あるのではないか。
異なる年代に、どう適応させるかを考えなければ」と
実現の可能性を感じさせた。

ロゲ会長の思いを、五輪開催を控える関係者は
どう受け止めているのか?

12年ロンドン五輪組織委員会のセバスチャン・コー会長は、
「改革を恐れてはいけない。
私たちは、時代と共に変化しなければならない」と賛同。

12年の第1回冬季ユース五輪(オーストリア・インスブルック)では、
ノルディックスキーで女子ジャンプが採用。
本家の五輪では、競技人口不足などで慎重論が強いが、
試験的な実施で成果を見極めようと、改革は進んでいる。

16年リオデジャネイロ五輪組織委員会のカルロス・ヌズマン会長も、
「五輪の原点を見つめ直す趣旨には賛成だ。
教育を大事にする理念も素晴らしい」、
「未来のオリンピアンは、シンガポールから生まれる。
すべての選手に、リオはドアを開いて待っている」と笑顔。

◆消えない政治の壁

今大会は、選手村などの競技外だけでなく、
試合の場での交流も話題に。

近代五種の男女混合リレー種目では、米国の男子選手と
キューバの女子選手が、国家間の政治対立の壁を越えてペアを組み、
笑顔で健闘をたたえあった。

テコンドー男子48kg級決勝では、
イラン選手が準決勝での負傷を理由に棄権。
決勝の相手、イスラエル選手の側は、政治的対立を理由に
戦うのを拒んだと訴えた。
真相は不明だが、後味の悪さが残り、
政治とスポーツの壁が完全には消えていないことも実感。

トップ選手の参加方針も、国ごとに対応は分かれたが、
日本オリンピック・アカデミー(JOA)理事で、五輪運動に詳しい
首都大学東京の舛本直文・大学教育センター教授は、
「ユース五輪は、IOC委員になるような国際的視野を持った
アスリートを育成する場になるだろう。
日本のトップ選手も、高い意識を持って参加してほしい」と期待。

大会そのものだけで、ユース五輪の価値は測れないだろう。
将来を担う若者たちが、2週間の経験を財産に変え、
どう生かしていくか?

この大会を経験した“若きオリンピアン”が、五輪改革に携わるころ、
本当の評価がなされるはずだ。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100904ddm035050066000c.html

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