2010年9月16日木曜日

学習塾は今(1)中学受験「先取り」対策

(読売 9月3日)

「入試まであと半年、暑さに負けず気を引き締めていこう」。
講師の呼びかけに、子どもたちが真剣な表情になる。

小学校が夏休みに入って間もない、7月26日。
学習塾「サピックス小学部」東京校の小学6年生クラスでは、
この日から夏期講習が始まった。

サピックス小学部は、首都圏1都3県に41教室を展開、
開成、麻布、桜蔭など、「男女御三家」をはじめとする
難関校に強い、と定評のある中学受験専門塾。
最近は、不況などで教育費を抑える傾向が強まっているが、
この塾では1989年の創設時以来、定員割れしたことがない。

指導の特徴は、「先取り教育」を徹底している点。
全学年、オリジナルのテキストを使い、通常は小学4年から
5年の末までに、小学校で習う単元を学び終える。
6年生は、志望校の過去問(過去に出された問題)に取り組むなど、
受験対策に集中する。
授業は、平日2日の午後5~9時で80分が3コマ、
土曜日は午後2~7時で75分が4コマ。
9月以降は、日曜日のクラスが加わる。

「中学入試で出題される問題は、小学校で学ぶ内容とは異なる。
早くから難問への挑戦を積み重ねていく中で、
論理的思考力や記述力、表現力を高めていくことは、
特に難関校受験には不可欠。
家庭学習を重視し、他の塾に比べるとゆとり授業です」、
同小学部教育情報センターの広野雅明部長(43)。

中学受験のための先取り教育は、入試問題が特殊な
難関校受験のため、大半の大手塾で導入。

とはいえ、小学校での学びに悪影響を与えるとの見方も根強い。

学習塾の教育に詳しい白鴎大学の結城忠教授(65)は、
「初めて知る時の疑問や感動などが、学ぶ面白さにつながっていくもの。
塾で先に学んでいると、小学校での授業に新鮮味が持てず、
学ぶ意欲の低下を招きかねない」

東京学芸大学の三石初雄教授(62)は、
「算数だと、なぜ通分しなくてはいけないのかなど、
原理やしくみを含めて教えることを重視。
塾で、すでに暗記的に頭に入れていると、先々まで興味を持って
勉強を続けていく姿勢に支障が出る可能性がある」と懸念。

中学進学塾を中心とする学習塾では、どんな教育が展開され、
子どもたちはどう学んでいるのか?
様々な塾の現状を紹介する。

◆メモ

日能研進学情報室によると、首都圏1都3県の中学受験者を
小学6年生の人数で割った受験率は、ゆとり教育への不安を
背景にした2000年(13.0%)から上昇。
今年は、20.3%(前年比0.9ポイント減)と減少に転じたが、
私立中高一貫校を中心に受験熱は続いている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100903-OYT8T00191.htm

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