2010年9月17日金曜日

異種動物の体内で臓器作製 受精卵にiPS細胞注入 移植への応用に一歩

(2010年9月3日 共同通信社)

さまざまな細胞になる能力があるiPS細胞を使い、
マウスの体内で、異種の動物であるラットの膵臓を作ることに
成功したと、東京大医科学研究所の中内啓光教授ら
3日付の米科学誌セルに発表。

この方法を応用すれば将来、動物の体内で人間の臓器を作り、
臓器移植に使える可能性がある。

中内教授は、「試験管の中で臓器を作ることは難しくあきらめていたが、
動物の体内で、しかも種を超えて臓器ができた。
入り口の段階だが、臓器作りは夢ではなくなってきた」

チームは中内教授、科学技術振興機構の小林俊寛研究員ら。
マウスやラットなどの受精卵は分割を繰り返し、
3、4日後には「胚盤胞」という状態に。

中内教授らは、遺伝子操作で生まれつき膵臓がないマウスを作り、
その胚盤胞の内部に、正常なラットから作ったiPS細胞を注入。
これを、代理母のマウスの子宮に移植。

生まれたマウスには、ラットの膵臓ができていた。
欠損した臓器が、iPS細胞由来の細胞によって補われた。
こうした方法は、「胚盤胞補完法」と呼ばれている。

マウスは、成体まで発育し、体内のラットの膵臓は
インスリンを分泌するなど正常に機能。
ラットの胚盤胞に、マウスのiPS細胞を注入する方法でも子が生まれた。
ラットとマウスという異種の細胞が、全身に混じり合った
キメラの作製は世界初。

現在、iPS細胞を使う再生医療は、臓器の作製よりも、
損傷した臓器や組織を分化させた細胞で修復する
細胞治療の研究が主流。

マウスの体内に、ラットの膵臓を作るという方法を、
人間に応用するには技術的、倫理的な課題解決が必要。

今回は本来、マウスの膵臓ができるべき場所にできず、
そこを埋めるように、胚盤胞に注入したラットのiPS細胞から
膵臓が作られた。

受精から間もない胚盤胞と、分化が進んでいないiPS細胞は、
似たような段階にあり、その組み合わせにより、
組織が形成される発生の過程を利用して、臓器作製を実現。

大型動物での実験を経て、最終的にはブタの体内で
サルの臓器を作り、人間にも応用できることを示したい。

この方法では、人間のiPS細胞を異種の動物の胚に注入し、
混ざり合って正常に成長する能力(キメラ形成能)が不可欠。

先行する胚性幹細胞(ES細胞)の研究結果から、
現時点では、人間のiPS細胞はキメラ形成能を持たないと予想、
技術的な課題となる。

クローン技術規制法に基づく指針では、
人間のiPS細胞を入れた動物の胚を、人や動物の子宮に
移植することは、人間と動物のキメラ作りにつながるとして禁止、
倫理的課題もある。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/9/3/124904/

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