2011年1月7日金曜日

国語力を鍛える(1)理解深める「全体読み」

(読売 1月5日)

「それでは、読みの交流に移ります。
気に入った場面を隣の人に教え、好きな理由を説明し合おう」、
小林智之・主任教諭(40)が指示。

八王子市立由木中央小学校で、4年生の国語の授業。
子どもたちがそれぞれ隣の席に向かって、
情感豊かに読み上げる声が、昼下がりの教室に満ち満ちた。

子どもたちが手にしていたのは、童話作家・新美南吉の『手袋を買いに』。
授業の最後には、先生と児童の“音読対決”も行われた。
母狐が子狐に、「人間の手の方をさしだすんだよ」と言うくだりを、
児童を代表して音読した荒川翔君(10)は、
「先生より上手」と、クラスメートから支持を受け、大きく顔をほころばせた。

「約束を守りなさいという強い思いに、つかまらないでと願う
優しさを混ぜて読んだ。
自分の意見をはっきり言えるから、国語は好きです」と荒川君。
小林主任教諭は、「教師の正解を押しつけず、
児童が自由に感じたことを大切にする。
相手を意識しながら、なぜそう感じたかを根拠を明示して伝えるよう
求めていけば、疑問点を自分で解決していく態度も身につく

2011年度から全面実施される新学習指導要領に向け、
同小は09年度から、読む能力を高める国語の授業に取り組んできた。
柱の一つは、ストーリーの展開全体を見通して読む「全体読み」。
「授業時間に合わせ、場面ごとに区切ってしまうこれまでの読み方では、
登場人物の気持ちの変化などを読み取ることは到底困難」と、
研究主任の小林主任教諭。

もう一つの柱は、教材に関連した作品を取り上げる「関連読書」。
『手袋を買いに』は、3学期に教科書で取り組む『ごん狐』への導入でもある。
次の教材への意欲を喚起しつつ、同じ作者の作品を比べ読みすることもでき、
読書量の確保にもつながる。

飯田薫校長(59)は、「良質な文学作品に触れながら、
豊かな言語感覚を育成していくことが、論理的思考力にもつながっている」

「自分を分かってもらいたい」、「相手を分かりたい」――
授業での交流を通して芽生える思いが、コミュニケーション力を育んでいく。


対人関係が苦手な子どもが増えるなか、国語教育の大切さが再認識。
すべての教科の基盤となる国語力を鍛え、
コミュニケーション力向上、学力アップを目指す各地の実践を追った。

◆新学習指導要領

文部科学省が示す学習すべき内容などの基準。
ほぼ10年ごとに改定、小中学校の新しい指導要領は
2008年3月に告示。
「ゆとり教育」からの転換とともに、各教科等にわたる
「言語活動の充実」を位置づけているのが大きな特徴。
小学校は11年度、中学校は12年度から全面実施。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110105-OYT8T00241.htm

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