2011年1月8日土曜日

2011年の科学界:ISSが完成、宇宙開発「一里塚」

(毎日 1月4日)

2011年は、人類が初めて宇宙を飛んでから50年の節目。
日本では古川聡飛行士(46)が、今年完成を見る
国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在するほか、
中国が独自の宇宙ステーション計画を始動。
科学に関する今年の主な話題を紹介。

旧ソ連空軍のユーリ・ガガーリン少佐(1934~68)が乗った
宇宙船「ボストーク1号」が地球を1周し、
「人類初の宇宙飛行」を成し遂げたのは1961年4月12日。
ガガーリン少佐は、100分あまり飛行してソ連領内に無事帰還、
「地球は青かった」という名言を残した。

50年後の2011年、世界の有人宇宙開発にとって「一里塚」となる年。

日本、米国、カナダ、ロシア、欧州の計15カ国が参加し、
地上約400kmの上空で、98年から建設が進められてきた
ISSが今年、いよいよ完成する。
完成に伴い、延べ約800人を宇宙に運んだNASAの
「スペースシャトル」は、6月にも最終飛行を終えて引退。
シャトルには、日本人宇宙飛行士7人も搭乗した。
シャトルの引退により、米国は一時的に有人宇宙輸送機を失い、
ISSへの往復は、ロシアのソユーズ宇宙船に頼ることに。

5月末、古川聡飛行士がソユーズ宇宙船で、
ISS長期滞在任務に出発する。
すでに長期滞在を経験した若田光一飛行士(47)、
野口聡一飛行士(45)に続き、日本人3人目。

99年、宇宙飛行士候補に選抜されて以来、13年目での初飛行。
滞在は約半年。
医師として東大病院に勤務した経歴を生かし、
宇宙で人体がどのような影響を受けるかを調べる実験などで
成果が期待。

古川さんは昨年12月、自身のツイッターで、
「試合に出るため、ずっと練習してきて(中略)やっとレギュラーになれた。
やった!という感じ」と、元野球少年らしい表現で喜びをつづった。

ISS計画には参加せず、独自の有人宇宙開発を続けてきた中国は、
今年前半にも自前の宇宙ステーション建設に向けた無人実験機
「天宮1号」の打ち上げを予定。

年内にも、宇宙船「神舟8号」を無人で打ち上げ、
宇宙でのドッキング実験を実施。
2020年までに、宇宙ステーション「天宮」を完成させる計画の第一歩。

◆原子力ビジネス

国は、原子力利用の基本方針「原子力政策大綱」
(05年閣議決定)を見直す。
温室効果ガス排出削減で原発が見直されている半面、
核燃料サイクルを支える高速増殖原型炉「もんじゅ」などの計画が
遅れていることを考慮しながら議論。
新大綱の原案は、年内をめどにまとめる方針。

日本の原発技術を、海外に売り込む動きも活発化。
政府は、原発の大規模な増設を計画している韓国政府と、
12月に原子力協定を結んだ。
電力9社などが昨年設立した新会社「国際原子力開発」は、
新興国を中心に活発にビジネスを展開。
今後もアジアを足がかりに、官民一体で売り込みを進める。

◆世界化学年

今年は「世界化学年」。
マリー・キュリー(1867~1934)が、ラジウムの発見で
ノーベル化学賞を受賞して100年になるのを記念し、国連が定めた。
世界90カ国以上が、化学への理解と関心を高めるための
活動を連携して展開。

国内では、化学関係の学会や企業などで構成する
「世界化学年日本委員会」(委員長・野依良治理化学研究所理事長)
が設立、化学のPRに取り組む。
各地での市民講座開催や科学館での展示会、
小中学生を対象とした伝記「キュリー夫人」の感想文コンクール、
オリジナル切手の発行などが予定。

◆天文

月が太陽の一部を隠す部分日食が1回、月が地球の影にすっぽり入る
皆既月食が2回ある。
6月2日の部分日食は、東北・北海道で見られるが、欠け方はわずか。
12月10日の皆既月食は好条件で、
全体が赤銅色に染まる月が全国で観察できそう。

久々に大規模と期待されるのが、「10月りゅう座流星群」。
ジャコビニ流星群とも呼ばれ、日本では10月9日未明、
最大で1時間に100個、欧州では800個ほど現れると予想。

◆科学技術政策

5年ごとに策定される政府の「科学技術基本計画」が3月、閣議決定。
第4期(11~15年度)の5年間に、政府の研究開発予算を25兆円、
国内総生産(GDP)の1%分投入する方針。
年平均5兆円の投資をうたうが、初年度に当たる11年度予算案で
計上したのは、その7割程度。
過去、補正予算を合わせて5兆円を達成したのは09年度の1回きりで、
科学技術予算を、「未来への先行投資」とする計画の理念が
実現するかは微妙。

11年度予算案では、研究者に配分する科学研究費補助金を
過去最高の増額とするなど、研究者への配慮もにじませた。

かつて財務官僚として、科学技術の予算編成にもかかわった
和田隆志内閣府政務官は、「過去5年間に使った予算の見返りは、
国民が納得するレベルに達していない」、
投資額に見合う成果を求める方針。
女性研究者の比率など、第3期(06~10年度)で掲げた数値目標を
達成したかを、2~3月に評価。

科学技術政策の司令塔「総合科学技術会議」の強化など、
政権交代以来、積み残してきた課題の解決も、今年ヤマ場を迎える。
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1月 4日未明 しぶんぎ座流星群ピーク
6月 2日早朝 部分日食(一部地域)
6月16日未明 皆既月食(一部地域)
10月 9日未明 10月りゅう座流星群ピーク
12月10日夜  皆既月食

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2011/01/04/20110104ddm016040017000c.html

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