2011年3月12日土曜日

教員の研修(5)いじめ対策 NPOの力も

(読売 2月25日)

「目つきが悪い」、「相手の気持ちが分からない」。
いじめ加害者のイメージが続々と挙がる。

意見が出尽くすと、講師役のNPO法人「湘南DVサポートセンター」の
滝田信之理事長がほほ笑んで言った。
「『1年1組』のみんな、よくできました。
本物の中学1年に劣らない数の意見が出ましたね」

東京都港区の民間施設で行われた同センターの
「いじめ防止プログラム」指導者研修。

生徒として滝田理事長の指導を受けていたのは、
小中、高校の教員ら約20人。

「加害者を知る」作業を通し、加害者の排除だけでは
根本的な問題解決にならないことなどを、約3時間をかけて学んだ。

プログラムは、滝田理事長が心理学の手法を使って開発した
家庭内暴力(DV)用のものを、校内に応用。
2007年から小、中学生向けのいじめ対策として使い始めた。

全体の説明会と、クラス単位のワークショップからなる計5時間。
中学校ではその後、いじめ防止のリーダー役の生徒を募り、
いじめを許さない校風づくりもする。

プログラムへの関心は、徐々に高まりつつある。
藤沢市で07年に試行したところ、一定の効果が認められ、
09年度から希望する市立小中学校での実施を予算化。
文部科学省も、今年度から同センターに補助金を出し、展開の糸口を探る。

一方、課題もある。
指導者養成に時間がかかる点。
滝田理事長によると、実際にいじめのある学級で実施した場合、
子どもの心を傷つける恐れもある。

講義中心の研修を20時間以上受けたうえで、
経験豊富な指導者と共に実践を積む必要がある。
通常業務だけでも忙しい教員は、この点がネックとなり、
プログラムを一人でできるようになった教員は、まだ数えるほど。

三重県伊勢市立五十鈴中学校の西村朱美教諭は、
今冬から滝田理事長の支援を得て、同中でプログラムを始めた一人。
「将来は独り立ちしたい」と意気込む。

文部科学省の緊急調査によると、今年度、
全都道府県・政令指定都市の教育委員会が、
いじめ問題に関する教員研修を実施、
その内容は一般的な講義形式が多い。
より実践的な手法を求める教員たちにとって、
こうした民間の研修への期待は大きい。

草の根からの試みが、教育現場を変えようとしている。

◆文部科学省の緊急調査

2010年12月実施。
全都道府県と政令指定都市の教育委員会が、
「今年度中にいじめ問題に関する教員研修を実施した、または実施する」。
その内容(複数回答)は、「講義・講話方式」が100%と最も多く、
「グループ協議」80.3%。
市区町村の教委では、研修の「実施の予定なし」33.9%、
内容も「講義・講話方式」77.8%、「グループ協議」44.9%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110225-OYT8T00205.htm

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