2011年3月6日日曜日

インサイド:トヨタとスポーツ/4 グランパス支援 地域とつながるツール

(毎日 2月25日)

昨秋、Jリーグ参加18年目にして初優勝を決めた
名古屋グランパスの前身は、旧日本リーグのトヨタ自動車サッカー部。

93年、Jリーグ発足に伴うプロ化に際し、トヨタだけでなく、
日本リーグを支えてきた企業チームは戸惑いを見せていた。
「地域密着」を掲げ、クラブ名称に企業名を入れることを禁じた
Jリーグの方針に、異を唱える企業は多かった。

最終的に、トヨタはJリーグ参加に踏み切った。
「グランパス支援を、トヨタ従業員の士気高揚につなげる関係ではない。
一出資会社としての付き合いにする」がトヨタ側の判断。

グランパスがプロとしてスタートするには、
企業チームとは異なる価値観の創出が必要。

◆サッカー教室も


今も、グランパスがトヨタの多大な財政支援で支えられているのは事実。
22・5%を出資する筆頭株主で、グループ企業の出資も10社を超える。
歴代社長は、トヨタグループの役員も兼務し、クラブハウスと練習場は、
硬式野球、ラグビー部が使うトヨタスポーツセンター(豊田市)の一角。
ユニホームの胸のロゴなどに出すトヨタの広告費用は、億単位。
しかし、プロクラブへの出資には違う意味合いがある。

ホームタウンの名古屋市にゆかりのある中部電力やJR東海、松坂屋など、
トヨタグループ以外の企業も出資し、チーム名の通り、
グランパスは「名古屋」のクラブ。

グランパスの福島義広・代表取締役専務は、
「トヨタグループ以外の企業からすると、ハードルが高いかもしれないが、
さまざまな形で協賛をいただければ」と広げた間口を強調。

愛知県全域ではここ3年間、東部の豊橋、岡崎両市で
子供たちのためのサッカー教室を設立し、
グランパスのコーチ陣が地域の指導者に対してセミナーを開いている。

選手の幼稚園訪問や年間チケット購入者と、
ストイコビッチ監督や闘莉王らトップ選手との交流会なども開催、
愛知県サッカー協会の小久保孝専務理事は、
「地域をより重視しているように感じる」

◆V効果で観客増員

かつての企業スポーツは、大企業を置く各地の都市「企業城下町」を
基盤に発展してきた。
スポーツは、社員の福利厚生や士気高揚だけでなく、
企業と地域社会を結ぶ役割を果たしてきた。

バブル崩壊や景気低迷の時期を経て、スポーツの価値観も
地域との関係を重視する方向にシフトし始めてきている。

こうした動きは、サッカー以外のプロスポーツにも波及し、
プロ野球では、ダイエー(現ソフトバンク)が福岡、ロッテは千葉、
日本ハムは北海道に本拠地を移し、地元住民の支持を確実に得ている。

昨季、グランパスの1試合の平均観客動員数は、
初優勝もあって、前年比約4000人増の約2万人に。
J1全体が、前年比500人減の約1万8400人の中、
福島専務は、「初優勝で地元が大いに盛り上がり、
熱心なサポーターだけでなく、多くの人が興味を持ってくれた」と
優勝効果を強調。

その盛り上がりをどう発展させていくか?
グランパスの動向は、トヨタという世界的企業と地域との関係を
これからも映し出していくに違いない。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/02/25/20110225ddm035050060000c.html

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