2011年3月6日日曜日

LRT:環境負荷小さい次世代型路面電車 東京・銀座でも計画

(毎日 2月21日)

国内外で、次世代型路面電車(LRT)が注目。

走行時の環境負荷が小さいことや、ドーナツ化現象に悩む
市街地の再生策として、日本でも再評価の機運が高まり、
東京・銀座で、約半世紀ぶりにLRTを走らせようとする計画。

住民との合意形成や既存の交通機関との調整などが課題。
中央区は、11年度予算案でLRT導入を検討するため、
調査費1500万円を計上。

土木部管理課は、「LRTを走らせることが可能か不可能か判断したい」と
慎重だが、具体的な青写真を描いている。

有望視するのが、臨海部の晴海・勝どき地区から築地を経由し、
銀座を結ぶ約3kmのルート。

道路が狭い都心では、レール幅を確保するのは難しく、
車道に専用または優先レーンをとって、
車両をつないだ連結バス(BRT)を走らせる構想も。

有賀重光・管理課長は、「BRTでも、電気やハイブリッドなど
環境にやさしい技術がある。エコなまちづくりに貢献できる」

計画の背景は、地価下落による都心回帰現象。
晴海を含む月島地区は、高層マンションの建設が相次ぎ、
過去10年間で人口が約1・5倍に増加。

晴海地区は、半径500m以内に地下鉄の駅がなく、
住民から新しい交通システム整備の要望が10年来寄せられていた。

LRT建設費は、車両費を除いて1kmあたり20億~40億円、
地下鉄と比較して10分の1近く、コスト面でも魅力的。

国土交通省は、06年に警察庁と「LRTプロジェクト」を設け、
整備費補助など自治体の導入支援を本格化。

支援第1号は、同年にLRTを国内で初めて新規開業させた富山市。
09年、市中心部の環状線が開業。
業績も好調で、商店街や住宅地などを狭い範囲に集約させる
「コンパクトシティー」も進んだ。
高齢化や低炭素型社会先進地として、評価が高い。

鹿児島市を走る市電では、06年度から線路敷き部分に
芝生を植える緑化事業を進めている。

景観向上やヒートアイランド現象の緩和などが狙いで、
広島市なども追随。
日本に先駆け、欧州では人口20万~50万人規模の
都市を中心に導入が進む。

ストラスブール(仏)、カールスルーエ(独)など、
LRT先進地として紹介される都市では、中心部から自家用車を締め出し、
歩行者と公共交通だけを通行させている。

「ポスト富山」の課題も浮上。
10年度末、一部区間でLRTの新線を開業予定だった堺市では、
09年秋の市長選で整備計画が争点となり、
反対派の竹山修身氏が現職を破って当選。
採算性などを理由に白紙となった。

沿線住民との合意がないまま事業を推進しようとした
旧市政への不信感が表れた形で、
LRTを巡る合意形成の難しさが教訓として残った。

国交省街路交通施設課は、LRT導入の条件を、
(1)まちづくり計画、
(2)沿道住民、
(3)既存の公共交通、
(4)予算・採算性--
の4分野での合意形成が必要と指摘。

谷口守・筑波大教授(交通環境政策)は、
「沿道空間全体の見直しや既存の交通ネットワークの中で、
LRTをどう位置付けるかが重要。
LRT導入で、交通渋滞が頻発すれば、かえって温室効果ガスの
排出量は増える。
都市中心部への集中投資に反対する意見も多く、
政争の具となりやすい。
首長の指導力が問われる」

◇振動少ない低床式

LRT(ライト・レール・トランジット)は、従来の路面電車に比べ、
騒音や振動を抑え、低床式車両で乗り降りしやすい
バリアフリー仕様が特徴の輸送システム。

排ガスがなく、減速時のエネルギーを電力として再利用するため、
環境負荷が小さい。
既存の道路に軌道を敷設でき、建設費が抑えられるので、
導入を検討する自治体が増えている。
既設路線でも、新型車両の導入などでLRT化が進んでいる。

日本初の路面電車は、1895年に京都市で開業。
日本交通計画協会によると、ピーク時の1930年代前半には、
65都市で総路線距離約1480kmに達したが、
高度成長期以降、自家用車や他の交通機関の普及などで減少。

昨年3月現在、17都市で総距離は約206kmに落ち込んだ。
銀座では、71年に姿を消した。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2011/02/21/20110221ddm016040048000c.html

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