2011年6月22日水曜日

一夜漬けはやはり身につかず

(サイエンスポータル 2011年6月15日)

間隔を置いて繰り返さない学習は効果がなく、
一夜漬けは身につかないことを、
理化学研究所の研究チームがマウスを使った実験で突き止めた。

理化学研究所脳科学総合研究センターの永雄総一・運動学習制御研究
チームリーダー、岡本武人テクニカルスタッフと、
遠藤昌吾・東京都健康長寿医療センター部長、
白尾智明・群馬大学医学部教授らは、
マウスの眼球の運動学習に着目し、
学習による記憶が、脳のどの部分に刻み込まれるかを調べた。

4.5秒で一往復するチェッカーボードをマウスに見させ、
ボードの動きに追従する眼球の動きの大きさで、学習効果を測った。

1時間集中的にチェッカーボードを見せたマウスと、
30分、1時間、24時間の休憩を取って15分ずつ4回繰り返し見せたマウス、
24時間の休憩を挟んで8回に分けて7.5分ずつ見せたマウスを比べ、
学習終了時の記憶(学習効果)に差はなかった。

学習終了後、24時間たってから調べると、
集中学習を受けたマウスは運動量が半分くらいに減少する、
つまり半分くらい忘れてしまっていることが分かった。

途中、間隔を置いて学習を受けたマウスは、
いずれの場合もほぼ完全に覚えていた。

研究グループは既に、短期の運動学習による記憶は小脳皮質に、
長期の運動学習による記憶は小脳核にあることを解明。

学習の終了直後、小脳皮質に局所麻酔剤を投与し、
小脳皮質の活動を止める実験を行ったところ、
集中学習させたマウスの記憶は消えてしまったのに対し、
間隔を置いて学習させたマウスの記憶は全く影響を受けない。

これらの結果は、集中学習でつくられた記憶は、
小脳皮質にとどまったままだが、
学習中に休憩を取ると、記憶が小脳核へ移動することを示している。

研究グループは、さらにタンパク質合成阻害剤を、
運動学習の直前に小脳皮質へ投与する実験を行い、
記憶を移動させるものが、休憩中に小脳皮質のプルキンエ細胞で作られる
何らかのタンパク質であることを突き止めた。

「学習には休憩が大事だ」ということを、
科学的に初めて証明することができた。

理化学研究所
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/110615/

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1106/1106151.html

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