2011年6月20日月曜日

緊急連載 学校と震災(15)退職校長 再開手助け

(読売 4月16日)

津波で崩壊した渡波中の1階。「おい、元気にやってるか」

震災1か月後の4月11日、約60人が暮らす避難所でもある
石巻市立渡波中学校で、千葉道博さん(60)が女子生徒に声をかけた。
千葉さんは、3年間勤めた同中校長を、
震災直後の3月末に定年退職したばかり。
被災地の学校の助っ人として、宮城県教育委員会が
今春退職の学校教員らを急きょ任用した「緊急学校支援員」の一人。

震災当日は、午前中が卒業式。
地震発生時、生徒の大半は下校していたが、戻ってきた生徒や
住民百数十人が学校に避難。
約30分後、高さ数mの津波が襲ってきた時、
校舎3階などにいて助かったものの、その後3日間学校が水に囲まれ、
食べ物も水もほとんどない状況に。

千葉さんは避難誘導を指示し、学校が孤立してからは、
寒さをしのぎ食べ物を分け合い、励まし合う避難者のリーダーとして奮闘。
「流れついた箱入りの冷凍魚を焼き、みんなで食べたりした」
住民が避難所を自主運営し始めた1週間後頃から、
教職員で手分けし、校外にいた生徒らの安否確認に避難所や自宅を回った。

3月下旬、県教委から協力要請が来た。
渡波小学校教頭時代も含め、渡波地区に5年間お世話に。
同中では、生徒3人の死亡が確認されたほか、
多くの保護者や教職員の家族も亡くなったり行方不明になったりし、
校舎も一部が壊れた。
「この状況で、はいサヨナラはできない」と引き受けた。

同中は今月21日に再開、教室不足のため、2年生が同中、
1年生は近くの万石浦中学校、3年生は万石浦小学校に分かれて
授業を行う多難な船出。
学校業務は、新しく赴任した阿部博志校長(56)が指揮。

千葉さんは、今も安否不明の生徒3人を捜し、校舎や体育館を掃除し、
子どもの心のケアなどを担当。
「子どもたちが生きていく確認をしたい。最後の仕事です」

新3年担任の阿部欽一教諭(41)は、
「震災から一時も学校を離れず、冷静に指示を出してくれた。頼もしい先生」
新3年の女子生徒(14)も、「家で作った野菜を文化祭や
調理実習に持ってきてくれた。身近にいてくれて心強い」

文部科学省は、阪神大震災や新潟県中越沖地震で長期間配置した
「復興担当教員」(常勤)の配置を今回も検討中だが、
宮城県の「緊急学校支援員」は、目前の必要に対処した県独自。

働くのは、1学期までがめど。
15日現在、11市町村で31人が任用され、
呼びかけに応じ、協力者は増える一方。

同県教委の後藤教至教職員課長は、
「多くの教職員が被災し、学校現場はとにかく人手が足りない。
事情をよく知る退職教員らの支援は、子どもや教員を力づけ、
学校の復興に役立つはず」と期待。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110420-OYT8T00147.htm

0 件のコメント: