2011年6月25日土曜日

高田松原の奇跡の一本松 クローン再生に成功 森林総合研究所

(東海新報 6月16日)

東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市の景勝地・高田松原で、
1本だけ残った「奇跡の一本松」から採取して接ぎ木した穂木が、
滝沢村の森林総合研究所林木育種センター東北育種場で活着。

同場では、4月22日に採取した穂木100本を接ぎ木。
通常の接ぎ木が冬に行われるため、1本でも成功してくれれば、
という不適な時期での試みだったが、
大津波を乗り越えた松の遺伝子が第1関門を通過した。

高田松原は、2㌔にわたって松林の続いた景勝地で、国の名勝に指定。
約7万本のクロマツ、アカマツがあった松林は、
3月11日の大津波に呑み込まれたが、奇跡的に1本だけが残った。

現地では、奇跡の一本松を残そうという取り組みが進められている。
この松の遺伝子を継ぐクローンの苗木を育てる作戦が、同場で進行。

同センターでは、天然記念物や衰退の危機にある貴重な樹木を守るため、
挿し木や接ぎ木で増殖し、育成後に苗木として里帰りさせる
「材木遺伝子銀行110番」という取り組み。
今回も所有者である同市からの申請により、
この事業による里帰りプロジェクトが始まった。

今回は、穂木が老木から採取したもので、
大津波をかぶり激しい塩害を受けていることに加え、緊急を要したため、
通常は木が活動を停止する冬に行う採取が春になったことなど、
育成には不利な要件が重なっている。

同場では、穂木は一般的に10本程度のところ、今回は100本を採取、
その日のうちに接ぎ木。
真水で丹念に塩を流すなど、少しでも生育を助けるための手を打ち、
生育経過が見守られてきた。
屋外育成で、よしずで日よけをして守られてきたが、
13日に4本の苗が活着していることを確認。

春原武志場長は、「冬まで待って採取しようとも考えたが、
一本松は厳しい環境にあり、保存に取り組む団体から
穂を取る話があったので採取した。
できるだけ多くやった方がいいと、100本を接ぎ木。
1本でも成功してくれればと思っていた。
4本が同じ遺伝子を持った松を、後世に残せる可能性を持ってくれて良かった」

今後の育成には、夏本番、北東北の厳しい冬など気象環境にも困難は伴うが、
同場では今回の活着で、第1段階をまずは成功。
丈が50㌢程度に成長すれば、高田松原の親元に里帰りできるよう育てていく。
3年ぐらいの期間が見込まれる。

地元の「高田松原を守る会」などが保護に取り組んでいる
奇跡の一本松はアカマツで、高さが27・7㍍。
樹齢は200年以上と推定。

塩害などによる枯死の危機から救おうと、震災後、周囲に土のうを積んで
海水の侵入を防いだり、根の成長を助ける活性剤を散布するなどの処理が
取られてきたが、1カ月ほど前から徐々に葉の変色が進行。
満潮になると、地盤沈下した地表に海水がしみ出し、根が傷んだとみられ、
現在は、地元有志の造園業者らによる海水流入対策として、
周囲に鉄板が埋め込まれている。

森林総合研究所材木育種センター
http://touiku.job.affrc.go.jp/press/kisekinoipponmatsu.pdf

http://www.tohkaishimpo.com/

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