2010年7月16日金曜日

知りたい!:医療観光 「ニンゲンドックを世界語に」海外富裕層呼び込め

(毎日 7月5日)

高水準の医療を売りに、海外の富裕層を呼び込む
「医療観光」の動きが活発に。
経済的な波及効果も大きく、関係者の期待感が高まる一方、
通訳の質や患者とのトラブルを懸念する声も。

「代表的なコースは、1泊2日で健診を受けた後、
京都や箱根、横浜、富士山など中国人観光客の間で
『ゴールデンコース』と呼ばれる東京-大阪間の観光名所をたどる」
日本旅行の広報担当者。

大阪市の医療法人と提携し、がんの早期発見に有効とされる
PET(ポジトロン断層法)検診を組み入れたコースを提供。
予算は、4~5日で約100万円、今年6月までに約110人が参加。

虎の門病院は、JTBと提携し、中国人向けの健康診断ツアーの
受け入れを始めた。
料金は、日本人の2~3倍に設定。
通訳料は、ツアー客が別途負担。
当面の目標は月10人程度、長期的な収益源と見込む。

医療観光の市場規模は拡大を続け、タイやシンガポールが
欧米や中東の富裕層取り込みで先行する。
政府の新成長戦略は、外国人患者の受け入れ拡大を柱の一つに
位置付け、「医療滞在ビザ」の新設も盛り込まれた。

日本政策投資銀行は、20年時点の医療観光の国内潜在需要を
年間43万人、市場規模を約5500億円。

こうした数字は、地方にも魅力的だ。
福島県は今春、がん検診と県内名所観光を合わせたツアーを企画。
県の負担で、上海の経営者らを受け入れた。
医師不足が深刻な同県だが、県観光交流課は
「健診だけなら影響はない」

日本人間ドック学会の奈良昌治理事長は、人間ドックが戦後、
日本で始まった経緯を強調、「世界をリードする日本の予防医学を
世界に広めるチャンス。『ニンゲンドック』を世界語にしたい」と意気込む。

虎の門病院の荒瀬康司医師は、「説明がきちんと伝わるか」と
言葉の壁を不安視する。
年間延べ約2万人の外国人患者を受け入れている聖路加国際病院は、
「『観光中心、医療はおまけ』ではなく、医療に重きを置いてほしい」
(経営企画室・国際部)と、医療観光には距離を置く。

日本人を基準とした検査数値の妥当性や、健診後のフォローの
難しさの問題も指摘。

医療観光に詳しい真野俊樹・多摩大教授(医療経済学)は、
「余裕のある病院が主導してやるべきだ。
国が過剰に推進すると、ゆがみが生じる」と指摘。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/07/05/20100705dde001040067000c.html

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