2010年7月12日月曜日

善玉コレステロール増やし動脈硬化防止

(2010年7月2日 毎日新聞社)

コレステロール値に、悪玉(LDL)と善玉(HDL)があるのは
よく知られているが、意外に見落としやすいのが善玉の数値。
悪玉と善玉の比率(LH比)を知って、動脈硬化防止を心掛けたい。

東京都内の男性(58)は、健康診断の結果、
悪玉のLDLが1dl当たり125mg、善玉のHDLは同45mg。
脂質異常症と診断されるのは、LDL値が140以上、HDLが40未満、
特に異常はない。

超音波検査(エコー検査)で、心臓周辺の血管を調べたところ、
鎖骨下の動脈の血管に脂がたまり、
血管が狭くなっていることが分かった。

この男性のケースをどう考えればよいか?
武田病院健診センターの桝田出所長(京都大学医学部臨床教授)は、
「こういうケースは珍しくない」
「悪玉のLDLが、正常目安の120未満であっても、
HDLが低い場合は心筋梗塞を起こすリスクがけっこう高いので、
LDLとHDLの比率であるLH比(LDL÷HDL)を見ることが重要」

HDLは、血管に付着した悪玉コレステロールを運び去る働きをする。
HDLが低いと、血管に脂がたまりやすくなる。

小倉記念病院が06~07年、急性心筋梗塞や狭心症で運ばれた
患者約370人を調べたところ、LDLの平均値は正常範囲内の111mg。
LDLが100未満と低く、より正常と思われた患者141人を調べ、
約3割の人はHDLが40未満と低かった。

同様の報告はほかにも。
カレスサッポロ北光記念クリニックの佐久間一郎所長らの研究報告、
心筋梗塞になった北海道内の男性患者571人のうち、
313人(約55%)はLDLが120未満と正常範囲、
HDLは正常範囲とはいえ低めの40~50程度。

こうした研究結果から、桝田さんは、
「LDLとHDLの比率が2~2・5以上ある場合、
LDLが正常範囲でも、要注意と考え、
念のためにエコー検査で頸動脈の様子を調べた方がよい」

エコー検査をすれば、血管の中に脂が
どれくらいたまっているかが分かる。
佐久間さんのクリニックでは、健診を受けた人に
LH比を最初から見せている。
その比率が2~2・5以上の場合、生活指導や治療を勧めている。

佐久間さんは、「HDLが正常範囲でも、40台の人は要注意」、
HDLの数値の重要性を話す。

倉林正彦・群馬大学医学系研究科教授は、
「健康な人では、LDLを120以下まで下げ、LH比を2以下に。
糖尿病や高血圧、家族に脂質異常症のある人は、
LH比を1・5程度にするのがよい」

医療機関では、LH比の改善には肝臓でのコレステロールの合成を
抑えるスタチン系薬剤が使われる。
中性脂肪の高い人は、コレステロールの腸での吸収を抑える
薬剤を組み合わせることもあり、3~4カ月程度の服用で
改善するケースが多い。

薬以外でHDLを上げる方法として、喫煙をやめて、
運動するのが一番効果的。
東山武田病院では、患者の体力に応じた運動もアドバイス。
今井優・健康運動指導科長は、「1日30分程度歩く運動を
続けるだけでも、約2~4カ月でHDLが上がる」と運動の大切さを強調。
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◆LDLとHDLの判定目安(日本動脈硬化学会の診断基準)

    正常範囲   要注意   要治療
LDL 119以下 120~139 140以上
HDL  40以上  39~35   34以下
 (数値の単位は、1dl当たりのmg)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/2/122351/

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