2011年1月30日日曜日

プロ棋士の直観は、尾状核を通る神経回路に導かれる

(理化学研究所 平成23年1月21日)

相手の王様をとって勝敗を決める将棋やチェスなどの
ボードゲームでは、論理的な予想の積み重ねや
直感的な次の一手の導出、という妙技が繰り広げられる。

この思考過程は、人間だけに高度に発達した思考の仕組みを
解明する上で重要であり、古くから研究対象として注目。

1950年代、チェス熟達者や愛好家が、対局中に考えていることを
声に出すことで、その思考過程を比較する研究が行われ、
熟達者であるほど盤面の記憶能力が優れていること、
最善手は直観的に生まれてくること、などが分かってきた。

将棋のプロ棋士も、次の一手は「直観的に」頭の中に浮かび、
残りの持ち時間は、他の手の確認や心理的な駆け引きなどに
費やすとコメント。

脳科学総合研究センターの認知機能表現研究チームらは、
富士通株式会社、株式会社富士通研究所、
社団法人日本将棋連盟の協力を得て、
将棋のプロ棋士が戦局を素早く理解し、最適な次の一手を
直観的に思いつく神経基盤を実験的に解明。

プロ棋士やアマチュアが、さまざまな盤面を見たときや、
詰め将棋(または必至問題)を解くときの脳活動を、
機能的核磁気共鳴画像(fMRI)で観察。

その結果、プロ棋士の脳で、特徴的に活動する2つの領域
(1)実戦局面を見て、瞬時に駒組を認識する大脳皮質頭頂葉の楔前部、
(2)最適な次の一手を、直観的に導き出す大脳基底核の尾状核、
を見いだした。

盤面を見て、次の一手を直観的に導き出す過程では、
楔前部と尾状核が連動して活動することも明らか。

「熟達者固有の直観」という現象の神経基盤を解明した
世界で初めての例として注目。

http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/110121/index.html

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