2011年2月3日木曜日

国語力を鍛える(8)正解より「思い」を尊重

(読売 1月19日)

「心に浮かんだことを自由に書きましょう。
何を書いても間違いじゃないから、消しゴムはいらないよ」

堀口明子・主任教諭(45)が配ったプリントに、
子どもたちが鉛筆を走らせる。

杉並区立高井戸東小学校で行われた4年生の国語の授業。
この日の教材は、「いす」という詩。
いつも机と人の下に静かに隠れている椅子を、
「力持ちのはずかしがりやさん」にたとえている。

プリントは、詩の一行一行の下に、「私(僕)は、〈 〉と思った。」と
書かれてあり、空欄部分〈 〉を「心のセリフ」で埋めていく。
「心に浮かんだセリフを、自由に書く。
セルフ・カウンセリングという方法です」と、堀口主任教諭。

心のセリフを書いた後、グループで発表し合う。
友だちの違った考え方に触れると、自分の中の選択肢が増え、
文章の読みが深まる。
発表の後は、拍手するのがルール。

「<いすは机にあまえているのかな>と思った」、
「<人がおならをしたらいすはくさいのかな>と思った」などと、
次々に発言する子どもたち。
「<いすは筋肉ムキムキだ>と思った」と発表して、
クラスの笑いを取った久米智理君(10)は、
「思ったことを自由に書けるし、発表するのも楽しい」

2009年度、この手法を取り入れる前、
「ここに気づかせたい」という部分で、答えられそうな子を指名する、
正解探しの授業を行っていた。
「でも、それでは一部の子が満足するだけ。
クラスの全員の実感にはならず、意欲も高まらないことに気づいた」と
堀口主任教諭は振り返る。

一人ひとりの思いを認めて、大事にしてあげる。
子どもの気づきの芽をつぶさないことが、
実感を伴った理解へとつながる。
「私はこう考える、と自信をもって発言できる子が増えている」。
始めてまだ日が浅いが、強い手応えを感じている。

2学期末の授業。
文章の段落分けをめぐり、クラスの中で意見が対立した。
様子を見ていると、「○○君はこう言いましたが、私はこう考えるから、
○○君が正しいと思います」という発言が相次いだ。
「表現力だけでなく、筋道を立てて説明できる力もついてきたと実感」
と堀口主任教諭。

認められることで生まれる安心感と自信が、
相手を認める気持ちにつながり、コミュニケーション力を高めていく。

◆セルフ・カウンセリング

思い込みから自由になり、自分と世界とを発見する方法として、
1960年代に創案された1人でできる自己発見法。
日常の場面を取り上げ、自分が見たこと、聞いたこと、思ったこと、
言ったこと、したことを書くことによって、自分の感情や欲求を洞察。
近年、教育現場での活用の試みが進んでいる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110119-OYT8T00160.htm

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