2011年2月5日土曜日

インサイド:スポンサーシップ 蜜月関係の新局面/5止 命名権の売却、岐路に

(毎日 1月30日)

競技場や球場をはじめ、文化施設、公園など、
幅広いジャンルに広がり、右肩上がりの成長を示していた
命名権販売に、昨年陰りが見えた。

きっかけは、7万2327人を収容できる日本最大級の
屋外多目的競技場「日産スタジアム」と、その周辺2施設の契約更新。

◆進む値下げ競争

横浜市と日産自動車が、昨年3月に更新した契約は、
3年・年額1億5000万円。
それ以前の5年・年額4億7000万円と比べ、3分の1以下。
日産は、契約更新の半年前、厳しい経営環境を理由に、
「同じ条件での更新は難しいが、条件が合えば(再契約を)
前向きに検討したい」と通知。

横浜市は、新たなスポンサーを探す方向にかじを切り、
金額を「3年以上、年額3億円程度」に引き下げ、
09年9月に公募・入札を実施。
応募者は現れず、「年額1億5000万円程度」に大幅値引きして
再公募し、日産が最終的に応札。

この“日産ショック”の影響で、昨年、国内の命名権契約金総額は、
44億円にとどまり、初めて前年割れを記録。

件数ベースでは依然伸び続け、昨年200件を突破。
この「ねじれ」の原因は、どこにあるのか?

命名権情報サイト「命名権ドットコム」を運営する
「ベイキューブシー」(千葉市)の盛光大輔ディレクターは、
命名権販売の7~8割は、自治体が販売主体となっているとし、
その手法の稚拙さを指摘。

「多くの自治体は、妥当な金額算定をしないまま販売額を決めて
公募にかけ、応募がないからといってすぐに安売りに走る。
お役所仕事の典型で、類似事例に頼るあまり、値下げ競争を招いている」

施設維持費の軽減が、命名権販売の目的である自治体側にも
言い分はある。
横浜市公園緑地管理課は、「公共施設の命名権なので、
公平性、公開性を担保する必要があった」と、
入札にこだわった理由を説明。

多くは、施設の価値評価には無関心で、
公募時の希望販売額の算定根拠も薄弱。
盛光ディレクターは、「公募といっても、施設の概要を
ホームページに載せておしまい。
積極的なセールス活動をせず、企業側に情報を届ける努力をしていない
ケースが多い」と厳しい。

◆直接売り込みで成果

03年、国内で初めて命名権契約を結んだ「味の素スタジアム」は、
07年11月、6年総額14億円(年額換算で2億3333万円)で契約更新。

当初(5年総額12億円)と変わらぬ大型契約となったのは、
「『豊かな生活文化を育み、地域に愛される』というスタジアムの
コンセプトと、当社の企業理念が一致したから。
交渉の中で、それをよく確認できた」(味の素広報部)。
公募した日産スタジアムと違い、直接交渉の成果とも言える。

命名権販売の公募に、市場原理を組み込もうと考える自治体も。
大阪府が、07年に導入した「ネーミングライツサポート事業者制度」
がその一例。
広告代理店や指定管理者に、販促活動や情報提供の協力を仰ぎ、
契約が成立した場合にだけ、10~15%の成功報酬を支払う。
「行政は営業努力が劣り、相場観をつかむノウハウもない」
(行政改革課)ことを自覚しての取り組み。

プロチームが本拠地とする施設がないため、契約には至っていないが、
「無報酬でも、こまめな情報は頂いている」と感謝。
経済原理を無視した自治体商法は、曲がり角を迎えているようだ。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/01/29/20110129ddm035050137000c.html

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