2008年6月7日土曜日

特集:きょう世界環境デー(その1) 正念場、温暖化対策

(毎日 6月5日)

1972年6月5日。
スウェーデン・ストックホルムで、国連は初めて環境をテーマにした
大規模な会議「国連人間環境会議」を開催。
それから30年以上がたった現在、
地球規模の環境問題は人類にとってますます重みを増している。
「地球温暖化」と「生物多様性」について、現状と課題をまとめた。

◇各国合意へ努力

二酸化炭素(CO2)など、温室効果ガスの排出削減を定めた
京都議定書の締結から10年余。
地球温暖化の加速ぶりが報告される中、
人類はこれからどう立ち向かうのか?

利害対立を超えて、各国が対策の共同作業に合意すべく、
今年から来年にかけての2年間は正念場。

昨年は、地球温暖化問題が進展する重要な節目の1年。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、第4次報告書を発表。
「温暖化は、人間活動が招いた可能性はかなり高い」と結論づけ、
熱波や洪水などの被害の増大を予告、対策次第で軽減できると強調し、
「今後20~30年間の努力がカギだ」。

温暖化への警鐘を理由に、昨年のノーベル平和賞は
IPCCとゴア米元副大統領が受賞。
潘基文(バンギムン)国連事務総長も、地域紛争など平和や貧困問題の
背景に温暖化があるとして、「人類が直面する最大の課題だ」。

温暖化防止バリ会議では、京都議定書で定めのない2013年以降の
温室効果ガス削減の新たな国際枠組みづくりを、
09年末までに行うとする「バリ・ロードマップ」の合意が成立。

産業革命以後、化石燃料を使い続けてきた先進国は、
特に温暖化の「主犯格」として、対策を率先することが求められる。
サミットでは、89年の仏アルシュで地球温暖化が主題となり、
90年ヒューストンで「気候変動に関する枠組み条約を2年間でつくる」。
条約は92年に実現化し、97年の京都議定書を生んだ。

しかし、米国は議定書を離脱。
条約が定める先進国の途上国支援は進んでおらず、
議定書に基づく削減の第1約束期間(08~12年)も始まったばかり。

05年英グレンイーグルズ・サミットでは、
温暖化対策で利害対立する先進国と途上国の対話の場を作り、
07年独ハイリゲンダム・サミットでは、
50年までに世界の総排出量を少なくとも半減する長期目標を
「真剣に検討する」ことで合意。

今年7月の北海道洞爺湖サミットは、
来年末までの枠組みづくりに拍車をかける提案や
合意形成の努力が求められている。

◇温室ガス70%減も可能--環境研試算

温室効果ガスの世界の排出量を、2050年までに半減させるには、
先進国は60~80%の大幅削減が不可避。
国立環境研究所などの研究チームは、
経済や生活を損なうことなく「70%削減は可能」と分析。
「ドラえもん型(シナリオA)」と「サツキとメイ型(シナリオB)」の
二つの未来像を示している。

将来のエネルギー需要などをシナリオ別に推計し、
必要な対策を逆算する「バックキャスティング」という方法で、
実現可能性や費用を算定。

「ドラえもん型」は、経済発展や技術志向が強い未来像。
人口は大都市に集中し、技術の進歩は早く、規制緩和で
人やモノが国境を越えて行き来する、活発で回転の速い社会。
温室効果ガスの排出量は増えるが、
▽生産設備の大幅な省エネルギー化、
▽高断熱・オール電化住宅の普及、
▽電力貯蔵による夜間電力の有効利用、
▽火力発電所・工場から出る二酸化炭素の地下貯留技術の開発
などで、1990年比で2050年に70%減は可能と試算。

「となりのトトロ」の主人公から名付けられた「サツキとメイ型」は、
地域重視や自然志向が強まると想定。
地方への人口回帰が進み、農林水産業が復権、労働時間は短縮し、
スローでゆったりした社会。
物質的豊かさからの脱却で製品需要が鈍るほか、
歩いて暮らせるコンパクトな街づくりが進み、ガス排出量は減る。
暖房器具や自動車へのバイオマス(家畜のふんや木くず、生ごみなど
有機性資源)活用、太陽熱温水器の普及促進で、
こちらも70%減は可能。

実現のためには、ドラえもん型では年間1・1兆~2兆円、
サツキとメイ型でも8000億~1・9兆円の追加費用がかかると試算。
「産業構造の転換やインフラ設備投資を進めてゆけば、
低炭素社会は不可能ではない。
可能性を現実のものにするには、政府の強い指導力が必要」。

◇省エネ技術、日本がサミットをリードする好機

--日本経団連・自然保護協議会、大久保尚武会長

日本経団連の大久保尚武・自然保護協議会会長は、
「温室効果ガスの削減と生物多様性の維持が車の両輪になる」。
「北海道洞爺湖サミットは、高い省エネ技術を持つ日本が
リーダーシップをとる絶好の機会」、
日本が環境問題で指導力を発揮するよう促した。

経団連は、92年に自然保護基金と基金の運営協議会
(自然保護協議会の前身)を設立。
会員企業などから支援金を募り、アジア太平洋地域などで
植林や生物保護活動をしている非政府組織(NGO)に対し、
07年度末までに計約800件、24億円を支援。

大久保会長は、「生物のすむ環境自体を保全することが一番大事」。
温室効果ガスの削減問題では、
「主要排出国すべてが参加することがカギであり、
ガス排出を抑える技術開発をどう進めるかをサミットで議論してほしい」。

経団連は、97年に環境自主行動計画を策定し、
産業ごとに温室効果ガス排出量削減などの取り組み。
「国民生活の中で、ガス排出をどう抑えるかも世界的な課題」、
環境教育が重要になる。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/06/05/20080605ddm010040202000c.html

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