2008年6月1日日曜日

暖かな破局:第4部・削減フロンティア/4 貧困国でプロジェクト次々

(毎日 5月23日)

ガスや電気すら使えない貧しい人が、世界に16億人もいる。
貧困の解消が、温室効果ガスの排出削減にもつながる
取り組みが途上国で動き始めた。

「これから育てる森が、生活の支えとなってくれる。期待しているよ」
首都ハノイから西に70キロ。
ベトナム北部カオフォン県の険しい山腹で開かれた植樹会。
ファム・タン・ハーさん(35)はスコップを手に、
足元に植えたアカシアの苗木にほほ笑んだ。

山腹の荒れ地309ヘクタールに50万本のアカシアを植え、
成長に伴う二酸化炭素(CO2)の吸収分6万1504トン(15年間)を
排出枠として売却する計画。

植林を、温暖化と貧困対策に活用する前例のないプロジェクトで、
事業を支援した日本の国際協力機構(JICA)によると、
最低でも18万ドル(約1900万円)の売却益が見込める。
「住民が自立できるシステムだ」として、ホンダが植林費用の一部を負担。

付近の農民1人当たりの年間平均所得は、400ドル(約4万2000円)。
売却益の半分は、植林に参加する約150世帯に分配し、
残りは伐採や次の植樹など森林維持の投資に回す。
「CO2削減と生活向上を両立するモデルケース」
(ファム・ブック・トアン農業農村開発省副林業局長)。
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「この事業がうまくいけば、女性や子どもたちが
水くみの苦労から解放される」。
国連開発計画(UNDP)ルワンダ事務所の環境・エネルギー担当専門員、
三戸俊和さんは、現場を飛び回る。

手がけるのは、雨水をフィルターや紫外線で浄化し、
飲料水にする試み。
煮沸のための化石燃料がいらない分を、CO2の削減と見なす。
米国の非営利組織(NPO)が
ルワンダ各地の高等学校に浄化設備を設置。

ルワンダでは、水道の整備が遅れており、
安全な水の確保は最重要課題。
「1000の丘の国」と呼ばれるほど起伏に富む土地を、
女性や子どもが水源まで長時間歩く暮らしを続けてきた。
三戸さんは、「女性に時間を取り戻し、子どもの就学率向上につながる。
地域の社会構造を変えるプロジェクトだ」。
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しかし、途上国での排出削減事業の多くは規模が小さいうえ、
実際に排出削減につながるかどうか不透明な面もあり、
初期費用が集まりにくい。

その課題克服のため、UNDPが2月に新たな試みを始めた。
一定の条件を満たした小規模の排出削減事業をまとめて
一つの事業として扱い、金融機関から初期費用の資金を調達する仕組み。
資金の出し手はリスク分散できるメリットがあり、
ルワンダのプロジェクトもこの仕組みを使う。

世界自然保護基金(WWF)などの国際的非政府組織(NGO)は、
貧困減少などに役立つ排出事業の認証基準
「ゴールド・スタンダード」を策定。
企業の環境活動の一環などとして、認証された排出枠が
通常より高値で購入されることを狙ったもの。

国連環境計画(UNEP)特別顧問の末吉竹二郎さんは、
「生活が大きく改善される温暖化対策にこそ、
資金が集まる仕組みを作ることが大切だ」。

http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080523ddm002040032000c.html

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