2009年9月21日月曜日

社会人基礎力(2)「チームで働く力」養う

(毎日 9月9日)

社会人に不可欠な「チームで働く力」は、
大学のうちから養うことができる。

「このままじゃ意見がまとまらない。リーダー交代が必要だ」
企業から与えられた課題をチームで議論し、提案をまとめる
京都産業大学の社会人基礎力プログラム。

大手種苗会社「タキイ種苗」(京都市)の課題に取り組む
チームのリーダー、経済学部3年森川宙さん(20)の発案に、
他のメンバーは沈黙。

タキイ種苗が、4月に提示したテーマは、
「将来の日本農業に、種苗メーカーが果たせる役割は何か?」
専門的かつ壮大なテーマだが、
「難しいテーマに挑戦したい」と、文系・理系学部から
2、3年生6人が集まった。

議論は迷走した。
「食の安全・安心を守るべきだ」、
「海外市場を開拓したら?」、
「食料自給率の低さが問題だ」
チームは、6月の中間報告で方向性を定められないまま発表し、
メンバーは焦っていた。

昨年も、同プログラムを受けた森川さんは、
経験と冷静な分析力で信頼は厚かったが、
優しい性格ゆえに意見を集約できない責任を重く受け止めていた。
「わかった。それなら交代してもらおう」

チームは6月、経営学部3年の青山祐太さん(21)を新リーダーとし、
最終報告会に向けて議論を立て直した。
同大教育プロジェクトスタッフの中尾憲司さん(36)も、
「私が助け舟を出すと、勉強にならない」と学生たちの判断を見守った。

「チームで働く力」は、経済産業省が示す
社会人基礎力12要素のうち、6要素を占める大事な能力。
〈1〉意見を述べる「発信力」、
〈2〉他人の意見を聴く「傾聴力」、
〈3〉意見の違いを理解する「柔軟性」など。

中川正明・同大キャリア教育研究開発センターディレクター(62)は、
2、3年生24人が受講する同大の課題解決型プログラムについて、
「違う学部の学生同士が、それぞれの専門を生かして協力。
3年生はチームを引っ張り、2年生はリーダーに従う立場を学ぶ」

毎週の授業では、主に議論が行われ、学生たちは、
企業で一般的に導入されている「PDCAサイクル」を用いて、
社会人基礎力の到達度を自己評価。
昨年度からは、企業経営者らに少人数グループで、
インタビューし発表する学習を1年生対象に実施。

青山さんらは、最終報告会に向け、
何とか提案の方向性を絞りつつある。
多くの市民に農業に親しんでもらえるよう、
貸し農園事業を支援し、種を提供できないだろうか――。

「実現は難しいと言われるかもしれないが、
自分たちなりに提案の根拠をしっかり示したい」
タキイ種苗の本田学・人事課長(42)は、
「我々が思いつかない発想を期待したい」

優秀な人材も、孤立しては才能を生かせない。
「チームで働く力」の大切さを学ぶ意義が見直されている。

◆PDCAサイクル

企業や組織の管理手法の一つ。
業務を遂行する際、PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(検証)、
ACTION(改善)を循環的に継続することで、
業務の改善や効率化をはかる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090909-OYT8T00196.htm

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