(毎日 9月14日)
太陽光発電の電力買い取り制度が11月に始まるなど、
再生可能エネルギーの導入拡大を機に、
「スマートグリッド(賢い=効率的な=電力網)」と呼ばれる
新技術が注目。
米国は2月、環境対策を景気浮揚につなげる
「グリーンニューディール政策」の柱として、
スマートグリッド関連に110億ドル(約1兆円)の支出を決定。
日本の民主党も政権公約で、研究開発や普及の促進を掲げる。
何が「賢い」のか、家庭との関係は何かを調べた。
◆発電量を計測
「太陽光に否定的だった1年前と、業界の空気が一変。
再生可能エネルギーの導入に積極的な米オバマ政権誕生が転機」
太陽光発電の拡大に備えて、電力10社は8月、320地点に
日射量計と気温計を設ける共同事業を始めた。
計測器の時刻をそろえ、全国一斉に1秒刻みで光量の変化を記録。
国の計画では、太陽光発電の導入は20年に、05年の約20倍の
2800万キロワット、30年に約40倍の5300万キロワットが目標。
発電量は、曇りや小雨で晴天の2~3割に落ちる。
国内全原発53基の合計を超す巨大な電源が、
天気次第で刻々と発電量を変える。
電力需給が調整不能となり、電圧や周波数の激変で
大停電を招く恐れも。
天候の変化は局地的で、1キロ離れれば晴れていることも。
1地点の発電量の増減は、広い地域でみれば平準化されるかも。
「かも、では安定供給の責任を果たせない」と
岡本浩・東京電力系統技術グループマネジャー。
計測器設置は、膨大なデータで不確かさを消す、世界初の挑戦。
これまでの電力の供給は、発電所から工場や家庭に
送電するという一方向。
これから、太陽光発電などが家庭や工場に設置される社会が訪れる。
電気の逆流を防ぐ出力抑制装置や変動の「調整池」となる
蓄電設備が不可欠で、経済産業省は計画通り太陽光発電を
入れるには、30年までに最大6・7兆円の対策費が必要と試算。
計測データが充実すれば、電力配分が調整できるほか、
配電網の工夫で費用削減も可能に。「スマート化」の一例。
スマートグリッドの意味は使う側によってまちまちで、
共通点は「ITを使えばスマート」という程度。
電気電子技術の規格を決める国際電気標準会議も、
昨年10月、定義の検討を始めたばかり。
◆遠隔操作も
米国では景気対策に加え、電気が不足すると、
電力会社が遠隔操作で各家庭の家電をオフにしたり、
エアコンの設定温度を変える需要調整技術として関心が集まる。
日本で家庭に最も身近なのは、関西電力が導入を始めた
「スマートメーター」。
従来の機械式メーターと同じ大きさだが、電気使用量データの
送信装置などIT機器が盛り込まれ、検針や不払いによる
供給停止が遠隔操作でできる。
「客から暴行を受けたりするのを回避できる」と同社。
通信機能を使えば、停電エリアがすぐ分かるため、
停電の早期復旧に役立つ。
電気使用量が30分刻みで分かるため、日別・時間帯別の電気代や
「CO2排出量で樹木何本分」といった情報を伝え、
省エネ意識を高めるサービスも検討中。
99年に研究に着手、昨年から試験導入を開始。
今年7月末までに約9万台を設置。
九州電力も今年度、約4万戸に導入。
CO2削減の「スマートシティー」構想に取り組む
アムステルダムでは、メーターを活用して各世帯が
削減目標を立てる計画だが、プライバシーの問題で
全戸導入が延期された。
新技術を応用すれば、独居高齢者の安否確認に生かせるが、
防犯上の課題もはらむ。
日本では、「使いたい時に使える」という消費者の需要に応え、
発電所増設が続いてきた。
現在、高度成長期に造られた電力設備の更新時期を迎えつつある。
電力中央研究所の栗原郁夫システム技術研究所長は、
「今こそ、新技術導入の好機。
電話と同様に、『ただいま込んでいます。クーラーの温度は
しばらく後でお下げください』と知らせてもいい。
安定供給しつつ、社会のコストを減らす方法が生み出せる」
http://mainichi.jp/select/science/news/20090914ddm016040018000c.html
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