2011年6月14日火曜日

緊急連載 学校と震災(9)通学路でも避難訓練を

(読売 3月31日)

震度5程度の揺れでも、学校現場などに大混乱が生じた今回の地震。
東京学芸大学の渡辺正樹教授(53)(安全教育学)に、
防災教育の課題を聞いた。

――現時点で浮かび上がってきたものは?

「ちょうど下校中、特に小学校低学年児童の多くが大地震にあったこと。
東京近辺で、帰り道でびっくりして泣き出したり、
学校に戻ったりした子がいると聞く。
早朝の阪神大震災、夕刻の新潟県中越地震とは違い、
下校中の子どもが大地震に遭遇、
恐らく初めてのケースでは。
校内での避難訓練はかなり浸透しているが、
下校中を想定した避難訓練が必要

――何が必要か?

「津波などはまた別の想定が必要だが、
通学路の中で公園など、物が倒れてこない、落ちてこない、
『ここに行けば安全な場所』を具体的に教える
上から物が落ちてきそうなビルの近く、倒れてくるかもしれない
自動販売機などには近づかない『約束』をしておく、など。
できれば、保護者も参加した訓練を行うのが望ましい」

――通学区域が広く、電車通学も多い都市部の私立小学校では、
何かあった時は近くの公立小学校、駅員などに助けを求めるよう、
子どもらに指導していると聞いた。

「有効な手段の一つかもしれない。
信頼できる大人に保護してもらう必要がある。
国立大学付属学校も、電車通学の子どもは多い」

――地震時に学校に子どもがおり、保護者が帰宅難民となって、
そのまま学校に宿泊したケースも多かった。
被災地では現在も、多くの学校が避難所となっている。

緊急時、どの教職員がどこまで責任を持つのか。
校内の役割分担はもちろん、学校と地元自治体との分担も
見直しておくべき。
子どもらを宿泊させた学校では、家庭に帰ることができなかった
教職員もおり、たとえ1泊でも大変だっただろう。

どの学校も、避難所になる可能性がある。
公的避難所になれば、自治体が責任を持つが、
実際には教職員が手伝いに入る例も少なくない。
線引きはしておかないと、教職員も持たない」

――今までの防災教育は役に立ったのか?

「役に立ったケースも多くあるはず。
想定を超えすぎ、今までの教訓があてはまらなかったケースも、
残念ながら少なくない。
今後は、今回の地震と津波をもとに、防災教育を根本から
立て直すことが急務。
三陸海岸を襲った最も高い津波が、東京近辺を襲う最悪の想定も、
自然災害の恐ろしさを知った今なら、必要に思える」

◆わたなべ・まさき

1957年生まれ。専門は安全教育と健康教育。
学校安全に関する教員研修の講師も務める。
編著に『最新学校保健安全ハンドブック』など。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110331-OYT8T00178.htm

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