2011年6月12日日曜日

水産物ネット販売復活へ 大船渡・新拠点立ち上げ

(岩手日報 6月8日)

東日本大震災の津波に、事業所や設備を根こそぎ奪われた
大船渡市三陸町越喜来の水産物ネット販売業「三陸とれたて市場」は、
今月中旬にも、越喜来に新しい活動拠点を立ち上げる。

静岡県出身の社長、八木健一郎さん(34)は震災直後、
葬儀店を手伝い、多くの津波犠牲者を送った。
絶望的な状況にも、「ここで踏ん張らないと」とネット販売を再開。
越喜来の人と全国の客の温かさを感じながら、
三陸の海の復興を目指して歩みを進める。

一面のがれきを見下ろす新拠点予定地で、社長の八木さんが
社員の松本泰博さん(36)とホタテとワカメの干物を作る。
津波に破壊された養殖施設から引き上げた、ホタテ約2千枚で作った。

「シンプルに火を通して干しただけなのにおいしい」と、八木さん。
原始的な加工法だが、時代を超えても変わらぬおいしさに気付いた。
同様に、津波は「大事なものに気付かせてもくれていた」と振り返る。

3月11日。津波は、会社と機材を奪った。
漁業者の多くが船や漁港を失い、販売する水産物も仕入れられない。
「絶望しかなかった」が、すぐには事業再興へ向かわなかった。

北里大水産学部在籍時、アルバイトしていた越喜来の葬儀店で1カ月働いた。
明かりのない体育館に、多くの遺体が並ぶ。
身元が分からない遺体を傷ませないよう気を配った。
悲しみに暮れる遺族に、傷んだ遺体を見せたくなかった。
多くの人を送り出した。

葬儀店の仕事が一段落し、ようやく自分の今後を考えた。
一瞬、静岡に帰ることも浮かんだが、地元漁業者が
「これから一緒につくっていこうな」と声を掛けてくれた。
「ここで逃げてはいけない」と思い、とどまった。

客からの励ましや支援も、勇気づけてくれた。
日付や魚種の指定はできないが、5月から「三陸復興おまかせ特別便」の
ネット販売受け付けを再開。
骨組みなどが残った薬・コンビニ店跡を修繕し、拠点とすることに。

津波は流された悲しみの半面、人のつながりという温かさを置いていった」。
起業から10年で積み重ねたつながりを大事にしながら、難局に立ち向かう。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110608_15

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