2011年6月17日金曜日

緊急連載 学校と震災(12)心の復興 教員の力で

(読売 4月13日)

避難所となった中学校の校庭で、小学生が走り回りながら
笑い声を上げていた。

宮城県東松島市立鳴瀬第一中学校。
避難してきた同市立野蒜小学校の2年~6年生12人が、
同小2年生担任の渡辺裕希教諭(44)と一緒に約1時間半、
体操や鬼ごっこ、全身を使ったじゃんけんなどを楽しんだ。

同小では、住民らが避難した体育館が大津波に襲われ、
子どもたちの目の前で、何人もお年寄りが亡くなった。
半分以上が家を失い、家や車が流されるのを見たり、
家族や友だちを亡くしたりした子もいた。
木島美智子校長(54)は、「子どもたちに少しでも安心感を与えよう」
と、心のケアを始めた。

地震の数日後、同小の避難所は閉鎖され、教職員室は同中に、
児童は家族と共に、同中などいくつかの避難所に分かれていった。
余震が続き、子どもたちを一か所に集められないため、
同中を拠点に、教員10人前後で手分けして同小児童がいる
避難所8か所を毎日回ることにした。

子どもたちと会話しながら様子を観察し、気になることをノートに記録。
20日から、同中でレクリエーションを開始。
「こおり鬼」や「手つなぎ鬼」など、全員が参加でき、
お互いに触れ合って安心でき、体を動かしてストレスを
発散できる遊びをした。

24日朝の職員会議。
木島校長は教員に、「皆さんも被災して大変だけれども、
子どもたちを毎日見守るのは私たちの仕事。
子どもが少ない避難所では、滞在時間を長くして遊んであげてください」
と呼びかけた。
見た目は元気だが、心の傷は大きい。
今はできることをして、少しでも楽しく過ごせるようにするしかない」

自宅や職場などすべてを失い、子どもに気遣う余裕がない家族は多い。
同小4年の長女(10)らと津波にのみ込まれて助かった
市川富美代さん(44)は、「娘はまだ、祖母の死も受け止められていない。
先生も被災しているのに、毎日声をかけてくれ、本当にありがたい」

震災時の子どもの心のケアに詳しい臨床心理士の大谷朗子さん(74)は、
「日頃の様子を知る教員は、子どもの不安を和らげて安心を与える力がある。
教員自身の負担も大きく、サポート体制の充実が必要だ

岩手県では今月8日、壊滅的な被害を受けた沿岸部にある宮古市などの
学校や、被災児童を受け入れる内陸部の学校の教員を対象に、
心のケアなどを学ぶ研修会を開始。
同県教委の担当者は、「カウンセラーなど専門家だけでなく、
教員の力も使って子どもたちを支えたい」

子どもたちと長く時間を過ごす教員が、心のケアのカギを握る。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110413-OYT8T00180.htm

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