(読売 1月8日)
開校4年目を迎える全寮制中高一貫校の生徒たちが変わり始めた。
午後8時。校舎から見える三河湾は、すっかり闇に包まれた。
食事と洗濯を済ませた生徒たちは、校舎隣の寮で、
誰に指示されることもなく自習を始めた。
自室にこもったり、ラウンジで教え合ったり。
寮内は張りつめた空気でいっぱいだ。
全寮制の中高一貫校、海陽中等教育学校(愛知県蒲郡市)では、
3年生までの男子338人全員が、消灯30分前まで2時間の
「夜間学習」に取り組む。
しかも、生徒の疑問に答えられるよう、教員が交代で待機する。
この日が当番の鈴木裕子教諭は、「生徒が自ら学んで成長している。
夜の表情は昼と違うので、何に困っているかもよくわかり、適切な指導ができる」。
当番以外の教員も、気になる生徒がいれば適宜、寮を訪れる。
同校は2006年、英国で指導者を輩出してきたパブリックスクールの
イートン校をモデルに、トヨタ自動車、JR東海、中部電力など
80を超える企業・団体の寄付で開校。
自由と規律を学び、独立心と協調性を育てるという建学精神の下、
生徒の生活には細かいスケジュールがある。
起床は6時30分、授業は8時10分に始まる。
放課後も、自習や補習の時間が決まっている。
校内にはコンビニエンスストアがあり、生活用品は電子マネーで買う。
小遣い帳と日誌は毎日、企業が派遣した若手社員が担う
フロアマスターに提出。ゲーム機の持ち込みや個室での飲食は禁止。
「洗濯の順番や時間決めなどで、自主的に寮を運営し始めた。
最初はこうはいかなかった」。
寮全体を束ねるハウスマスターとして寝食を共にしてきた
篠崎高雅さん(49)は、生徒の変化を口にする。
渡辺誠副校長(59)も、「生徒同士の衝突も先輩が調整するなど、
リーダー意識が芽生えてきた」。
生徒からも、「自分のことは自分でできるようになった。後輩も育てたい」
授業は、「高校までの内容を4年で終える」としてきただけに密度が濃い。
1期生の3年生は、昨春から高1のカリキュラムに入った。
生徒の習熟度に多少の差があり、きっちり4年で終えるかどうかは未定だが、
5~6年は、4年間の復習と受験準備のため演習中心の授業にし、
大学レベルの教材も用意する。
今年度から教員の進路指導研修が始まり、外部の講師から、
大学受験の動向、受験生への授業の進め方などの話を聞いた。
だが、「大学受験対策で成績に一喜一憂せず、社会のリーダーになることを
イメージできる指導を心がけたい」と渡辺副校長。
黒川清・前日本学術会議会長、浅島誠・東京大副学長など、
日本のトップリーダーを講師に招いた特別講義も続けてきた。
「これまでは学校が与えたレールに乗っていればよく、恵まれすぎていた。
何を学びたくて、何をやりたいのかを考えさせ、
自ら学校に働きかける生徒を育てていきたい」
リーダーの卵をどう育てるか、本格的な挑戦が始まる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090108-OYT8T00228.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿