2009年1月13日火曜日

現場再訪(2)全寮制自主性の芽生え

(読売 1月8日)

開校4年目を迎える全寮制中高一貫校の生徒たちが変わり始めた。

午後8時。校舎から見える三河湾は、すっかり闇に包まれた。
食事と洗濯を済ませた生徒たちは、校舎隣の寮で、
誰に指示されることもなく自習を始めた。
自室にこもったり、ラウンジで教え合ったり。
寮内は張りつめた空気でいっぱいだ。

全寮制の中高一貫校、海陽中等教育学校(愛知県蒲郡市)では、
3年生までの男子338人全員が、消灯30分前まで2時間の
「夜間学習」に取り組む。
しかも、生徒の疑問に答えられるよう、教員が交代で待機する。

この日が当番の鈴木裕子教諭は、「生徒が自ら学んで成長している。
夜の表情は昼と違うので、何に困っているかもよくわかり、適切な指導ができる」。
当番以外の教員も、気になる生徒がいれば適宜、寮を訪れる。

同校は2006年、英国で指導者を輩出してきたパブリックスクールの
イートン校をモデルに、トヨタ自動車、JR東海、中部電力など
80を超える企業・団体の寄付で開校。
自由と規律を学び、独立心と協調性を育てるという建学精神の下、
生徒の生活には細かいスケジュールがある。

起床は6時30分、授業は8時10分に始まる。
放課後も、自習や補習の時間が決まっている。
校内にはコンビニエンスストアがあり、生活用品は電子マネーで買う。
小遣い帳と日誌は毎日、企業が派遣した若手社員が担う
フロアマスターに提出。ゲーム機の持ち込みや個室での飲食は禁止。

「洗濯の順番や時間決めなどで、自主的に寮を運営し始めた。
最初はこうはいかなかった」。
寮全体を束ねるハウスマスターとして寝食を共にしてきた
篠崎高雅さん(49)は、生徒の変化を口にする。

渡辺誠副校長(59)も、「生徒同士の衝突も先輩が調整するなど、
リーダー意識が芽生えてきた」。
生徒からも、「自分のことは自分でできるようになった。後輩も育てたい」

授業は、「高校までの内容を4年で終える」としてきただけに密度が濃い。
1期生の3年生は、昨春から高1のカリキュラムに入った。
生徒の習熟度に多少の差があり、きっちり4年で終えるかどうかは未定だが、
5~6年は、4年間の復習と受験準備のため演習中心の授業にし、
大学レベルの教材も用意する。

今年度から教員の進路指導研修が始まり、外部の講師から、
大学受験の動向、受験生への授業の進め方などの話を聞いた。
だが、「大学受験対策で成績に一喜一憂せず、社会のリーダーになることを
イメージできる指導を心がけたい」と渡辺副校長。
黒川清・前日本学術会議会長、浅島誠・東京大副学長など、
日本のトップリーダーを講師に招いた特別講義も続けてきた。

「これまでは学校が与えたレールに乗っていればよく、恵まれすぎていた。
何を学びたくて、何をやりたいのかを考えさせ、
自ら学校に働きかける生徒を育てていきたい
リーダーの卵をどう育てるか、本格的な挑戦が始まる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090108-OYT8T00228.htm

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