2009年1月11日日曜日

細胞内小器官、増殖を制御 千葉大など「定説」覆す発見

(朝日 2009年1月9日)

葉緑体やミトコンドリアといった細胞内の小器官は、
進化の過程で細胞に取り込まれた微生物の名残で、
細胞核に支配されている、と考えられてきた。
だが細胞の増殖過程を調べてみると、
逆に葉緑体などが細胞核に信号を送り、
DNAの複製を促していることが、千葉大や東京大などの研究でわかった。
従来の「定説」を覆す成果で、米科学アカデミー紀要(電子版)に発表。

使ったのは、シゾンという原始的な単細胞藻類
研究グループの田中寛・千葉大教授(分子遺伝学)によると、
シゾンの増殖過程では、まず小器官のDNAが複製され、
その後、細胞核のDNA複製が行われていた。
小器官のDNA複製を阻害する薬剤を与えると、細胞核のDNAも増えなかった。

だが、小器官のDNA複製の際にできるテトラピロール類と呼ばれる
物質を与えると、細胞核でのDNA複製が進み始めた。

葉緑体などが、この物質を通してDNA複製の信号を送り、
細胞増殖を制御していたことに。
まるで寄生体(パラサイト)のようにも見えることから、
グループはこの信号を「パラサイトシグナル」と名付けた。
タバコの細胞を使った実験も行い、
この信号が種子植物でも働いていることがわかった。

田中教授は、「ヒトや動物でも、この信号が働いていることを示せれば、
医学的に重要な知見が得られる可能性もある」

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