2009年1月14日水曜日

現場再訪(3)「夢」の教職 さらに一歩

(読売 1月9日)

教員養成を意識したコースを設けた高校の1期生が巣立つ。

「保護者と良い関係を築くために必要なことは?」、
「いじめへの対応で、特定の児童をえこひいきしているように
見られるかもしれない。どうすればよいか」

奈良県立平城高校「教育コース」の3年生が、
教師のような質問を投げかけた。
昨年11月末に開かれた、事実上、締めくくりとなる授業は、
教員養成課程を持つ京都市の佛教大、京都女子大と、奈良教育大から
教員を招いて意見交換会になった。
質問に答える大学教員は、生徒の成長ぶりに驚きを隠さない。

1期生の3年生41人は、大学教員の指導を受けながら、
「学級崩壊を止めるには」、「『学力低下』の実態」といったテーマを
自分で決めてリポートにまとめた。
生徒を小学生に見立てた授業も経験。
近隣の小学校で行事を手伝ったり、教師に張り付いて授業の補助役も。
そんな体験も報告書にまとめて発表。

教育コース主任の岩崎俊哉教諭(50)は、
「現実を見てきたから、必要なことをもっと学びたいと思うようになったようだ」

同時期に教育コースを設けた県立高田高校(大和高田市)
1期生39人も同じ。

「教職は『夢』だった。でも、教師の仕事を実際に見て大変さを知った。
自分の意見を子供たちにしっかり伝えて、信頼関係を作ることが大切だとわかった」
と大阪教育大に推薦入学が決まった藤本志帆さん(18)。
担任の吉田祥子教諭(50)は、「最初は、『あこがれ』だった意識を、
どう変えて持続させるかが課題だった」というが、
生徒の意識は着実に高くなっている。

両校1期生の進路が決まろうとしている。
すでに80人中25人が、教育系大学に推薦で合格。
高田高は、全員が教員志望。
平城高は、10人が他の進路を選ぶことになりそうだ。

両校の1期生は、3月実施の一般コースとは別に、2月入試で入学。
平城高の谷垣康校長(53)は、「教職にこだわらずに平城高を目指す生徒が、
教育コースを受験したことも影響したのではないか」

だが、「教職とのミスマッチ(不釣り合い)を防ぐ意味もある。
教員コースで身につける人との接し方やコミュニケーション能力は、
どの世界でも必要な能力で、生徒にはプラスだ」

「確かに、『教員は自分に向いていないのでは』と訴える生徒も。
高校段階で、教師の仕事を真剣に考える経験を積むこと自体、意味がある」と
3年間、出張講義も担当してきた京都女子大発達教育学部の田井康雄教授(58)。

平城高の教育コースから推薦で4人を受け入れる佛教大教育学部の
原清治教授(48)も、「教員養成課程の大学が、高校と協力して
良い教師を育てていく、そのモデルの基礎はできたと思う」と評価。
バトンを受け取る大学に注目が集まろうとしている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090109-OYT8T00227.htm

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