(毎日 1月9日)
人口10万人当たりのがん死亡者数が346・1人と、
秋田県(352・5人)に次ぐ全国ワースト2位の島根県。
島根で行われている一貫した患者支援の取り組みが注目。
国立病院機構京都医療センター(京都市)に08年3月、
府内初の院内がん患者サロン「うずらプラナスの会」が開設。
待合ロビーの一角のついたてで仕切られた空間に、毎週金曜日、
患者や家族が集まる。
悩み相談や情報交換が目的で、他病院の患者も訪れる。
夫婦で顔を見せた肺がんの男性(78)は、「こういう場所を探していた。
患者同士がつらさも分かちあい、先輩患者の体験も参考になる」
患者の思いをセンターが受けて実現。患者や家族が運営する。
世話人で大腸がん患者でもある大東和子さん(70)は、
「みな話せない不安や悩みを抱えている。
『サロンでしか泣けない』と涙を見せる人もいる。
『がん=死』ではないと伝えたい」と訴える。
参考にしたのは、島根県の患者サロンの取り組み。
05年12月、都会と地方との情報格差を感じたのがきっかけで、
患者の心のケアや患者が主体的に治療にかかわる体制作りを目指している。
現在までに、病院や公民館など計21カ所にサロンがあり、患者の要望で実現。
誰もがどのサロンにも参加できる。
全サロンが連携し、情報を県がホームページで公開するなど
行政や医療機関も支援を行う。
島根のサロンには全国から視察が相次ぎ、取り組みは約20府県に。
京都で院内サロンの開設を進めるNPO法人「京都がん医療を考える会」の
佐藤好威理事長(65)は、「京都は、高度な医療機関はあるが、
患者への支援は遅れている。サロンに興味を示さない病院も多い。
がん医療の向上のためにも、もっとサロンが必要だ」
06年6月、国や自治体などの責務を示し、がん対策に取り組む
「がん対策基本法」が成立。
この動きに呼応するように、島根県では患者らの声を受け、
同年9月に全国初の「県がん対策推進条例」が成立。
条例の存在が、行政の患者サロン支援や、
関係機関の連携と取り組みを強力に促進。
条例策定の動きはその後、高知県、神奈川県、新潟県、長崎県にも。
島根県では07年7月、がん治療・検診などで使う高度医療機器の
早期整備を目的に、財団法人島根難病研究所が運営する
「がん対策募金」が始まった。
3年間で7億円を集める目標。
企業の協力で、売り上げの一部を寄付する商品も登場し、
バナナや緑茶など11商品に拡大。
消費者も、対象商品を買うことでがん対策に参加することになり、
これまでに約3億1000万円の募金が集まった。
「病院や行政は、患者の支援にどう関与すべきか」。
島根県には、行政や病院関係者の視察や講演依頼が相次ぐ。
県医療対策課は、「島根には、患者や市民の盛り上がりがあった。
行政主導では長続きしない。
まずは、患者さんの取り組みに耳を傾けたことが成功につながった」
08年11月30日、全国のがん患者や家族らが参加する
「第4回がん患者大集会」が全国9会場で開かれた。
各会場は同時中継で結ばれ、パネリストでがん対策に詳しい
埴岡健一・東京大特任准教授が、
「患者、医療、行政の三位一体でなく、島根はメディア、企業、議会などの
政治を合わせた『六位一体』で取り組み、それがうまく機能している」と、
島根方式の特徴を評価。
一方、がん対策基本法に基づき各都道府県は、
がん対策推進計画を策定。
5大がんの検診率を、10年度以内に70%に(宮城県)、
在宅ターミナルチームを300カ所構築して患者在宅みとり率を5年以内に
12%以上に拡大(兵庫県)、
公共施設の全面禁煙化(静岡県)など、独自の施策を打ち出している。
http://mainichi.jp/life/health/news/20090109ddm013100145000c.html
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