2009年1月12日月曜日

環境の旗手たち:/3 eスター・赤沢輝行さん

(毎日 1月7日)

◇「廃熱」を新たな力に--赤沢輝行さん(41)

<1816年に、スコットランドで発案されたスターリングエンジンの
普及が近づいてきた。燃料を爆発させて運転するガソリンエンジンなどに比べ、
多様な熱源から動力を得られ、静かで二酸化炭素(CO2)も出さない。
廃熱を再利用する製品を開発>

スターリングエンジンは、シリンダー内部の気体に外から熱を加え、
膨張・圧縮させてピストンを動かし、動力に。
工場や発電所から出る廃熱で、このエンジンを動かし、発電機で電気をつくる。
これまで、ガスなどを燃やした時の1000度以上の高熱で動かす
タイプはあったが、廃熱の97%を占める500度以下で発電できないか。

<パナソニックの技術者出身。05年、社内ベンチャー制度を活用して起業。
スターリングエンジンは、高出力を得る仕組みや採算性が課題>

「すごい技術に挑戦すべきだ」と言われた。
それなら2世紀も実現していない難攻不落の技術に、
思い切って残りの人生を懸けてみよう、と清水の舞台から飛び降りた。

海上技術安全研究所(東京)との共同研究に着手。
07年8月、船舶のディーゼルエンジンから出る400度の廃熱で
発電機を動かすことに成功>

廃熱を取り込む熱交換器に、熱を伝えやすい銅を使い、
強度不足は銅の周囲をステンレスで覆って補った。
熱を動力に換える性能も向上させ、油を差さなくても動く仕組みにして
コスト削減に役立てた。基本技術は確立。

<今月末から奈良県で、実際に工場で使う試験を始める。
2年後には、1キロワット(ドライヤー1台分)の電力を賄う製品を
約100万円で発売する計画>

将来は、価格を下げる予定。もっと低い温度での稼働も課題。
200度前後でも動けば、廃熱の3割を活用できる。
「もったいない」という意識を根付かせ、「環境革命」を起こす
一員になれれば、と願っている。
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◇廃熱

1年間に国内の産業活動で発生する量は、
原油換算でドラム缶約1億4500万本分。
大部分が捨てられている。
試算では、国内全工場にスターリングエンジンを設置して
廃熱を可能な限り再利用すると、大量の電気を賄い、
CO2排出量を年2602万トン削減できる。
太陽光発電を全世帯など、日本で最大限(全土の12%の面積)に
普及した場合のCO2削減量2523万トンを上回る。
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◇あかざわ・てるゆき

熊本大大学院修了(資源開発工学)。
92年、松下電器産業(現パナソニック)入社、コンプレッサー開発に携わる。
05年4月、社内ベンチャー、eスターを一部出資して設立、社長就任。
従業員8人。福岡県出身。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/01/07/20090107ddm008020092000c.html

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