2009年1月15日木曜日

現場再訪(4)教員版FA制じわり

(読売 1月10日)

教師が働きたい学校に異動できる制度は定着したのだろうか。

「私の場合は非常にうまくいったケースでしょう」
昨春から、横浜市立八景小学校の副校長を務める重田英明さん(46)が
「教員版FA(Free Agent)制」の経験を振り返る。
教師が異動希望を宣言し、受け入れ先の校長と交渉の末に異動できる制度。
重田さんは、横浜市が制度を取り入れた最初の年に当たる2005年度、
市立下野谷小学校に移った。

外国籍の児童らを指導する国際教室を受け持ち、若手の研修も担当したが、
最も力を注いだと言えるのが、校長の指示で取り組んだ校内組織の見直し。

個々の教師の校務を大胆に整理。
全教職員を、学習に関連する「自分部会」、学級運営や人権教育にかかわる
「友だち部会」、地域行事や環境教育を担当する「まち部会」の
いずれかの所属にした。
担任も、低・中・高学年ごとに1人か2人が各部会に所属、
他のメンバーには持ち帰って情報を伝える形にした。
組織の簡素化で会議の数が減り、子供と触れ合う時間が増えた。

この経験で、学校運営の大切さを体感し、視野が広がったというが、
現在は、FAの経験が話題になることはない。
「『FA』は、あくまで異動の手段。ずっと背負う看板ではない。
要は、どれだけ制度を生かして仕事が出来たかです」と重田さんはクギを刺す。

初年度にFA宣言した56人中、異動が成立したのは41人。
08年度も90人中85人。
市教委は、FA制が定着しつつあるとみる。
現在では、佐賀県と大阪市も導入。

FA制を最初に導入したのは、04年度からの京都市。
最初は、FA宣言した178人中110人が異動。
08年度は86人が宣言、56人が成立と半減。
逆に、FA制と同じ年に始めた「公募制」は、
13校から08年度には100校まで広がった。
校長が求める教員像を示し、異動希望者を募る制度。

全国的には、約30教委にまで広がっている。
「FA制は、手を挙げても採用されない可能性がある。
公募制は、必要とされる人材像が明確で、手を挙げやすいのではないか」と
京都市教委は指摘する。

両制度とも、校長が欲しい人材像を明確にするなど
リーダーシップを発揮する必要性がある。
校長の能力も問われ、人材の偏りを招く可能性もある。
人事上の混乱を防ぐため、欠員が出た場合に限定して公募を続けている
三重県のような教委もある。

一方、4年前にFA制で京都市立伏見中に異動し、
生徒指導部長として活躍する岡本直教諭(52)は、
「自分が必要とされる場所で、出来る仕事を思い切りさせてもらっている。
制度を利用して良かった」

そもそも、教師の希望をかなえるという点で、両制度は相関関係にある。
二つの制度を車の両輪と考えれば、適材適所を促す制度として
浸透しつつあると言えそうだ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090110-OYT8T00248.htm

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