2009年1月14日水曜日

環境の旗手たち:/5 東京ガス・松井徹さん

(毎日 1月9日)

◇焼却困難な海藻からメタンガス--松井徹さん(41)

<異常繁茂した海藻は、浜辺に漂着して腐臭を放つ。
海藻は、9割が水分で焼却しにくく、埋め立てなどの処分に
年間数千万円をかけている自治体も。
東京ガスは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との
共同研究で、この厄介者の資源化を目指し、
メタンガスを回収する世界初のプラントを07年に開発

10年前、「バイオマスを研究してみよう」と集まったのは約10人。
正式な研究テーマとして会社に認められたのは、その後のこと。有志の集まり。
「海藻に困っている自治体がある。使えないか」と、
メンバーから寄せられた情報が、海藻に関心を持つきっかけに。

<微生物を使って海藻を発酵させて糖を生成し、
さらに発酵させてメタンガスを取り出す。
海藻に適した微生物探しがポイント

土や食品にすむ微生物を数十種類、試した。
海藻の糖は、陸上生物の糖とは分子構造が異なっているようで、
効率よく分解できる微生物探しに1年ほどかかった。
しかも、1種類見つければいいわけではない。
海藻を分解して糖にする、その糖をさらに分解するなど、
いろいろな役割の複数の微生物を共生させる必要。
海藻には、ごみも混じるので、雑多な環境に強くなければ。

<02年度から5年間、実証実験を繰り返し、
1日1トンの海藻から約20立方メートルのメタンガスを回収することに成功。
出力を安定させるために天然ガス(都市ガス)と混合し、
1時間当たり10キロワット時(一般家庭20世帯分)の発電量を得られる。
一部はカスとして残るが、肥料にできる。
水産関係者から説明を求められる機会も増えている>

バイオマスの利用は、地球環境をよくすることにつながる。
プラントの建設や稼働、海藻の回収などで雇用を創出し、
地域を活性化する効果も期待。
人に自慢できる仕事っていいもの。
==============
◇バイオマス

食品廃棄物や動物のふん尿、下水汚泥、間伐材など生物由来の資源。
堆肥化したり、発酵や燃焼により、メタンガスやエタノールなどの
燃料に替えることができる。
海に囲まれた日本は、海藻利用も期待。
国は06年、石油などの化石燃料からの脱却や二酸化炭素(CO2)
排出量削減のため、バイオマス・ニッポン総合戦略を決定し、
開発や利用を促進。
==============
◇まつい・とおる

東京工業大工学部化学工学科卒。91年、東京ガス入社。
基盤技術部技術研究所で、学生時代からの触媒研究を生かし、
排ガス浄化技術の開発に携わる。
06年4月から環境システムチーム主幹。東京都生まれ。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/01/09/20090109ddm008020059000c.html

0 件のコメント: